2020年6月18日、メルセデスベンツが欧州で新型AMG E63 4MATIC+を世界に向けて発表した。日本国内の市場でも、輸入車としては5年連続トップの販売台数を記録しているメルセデスだが、新型AMG E63 4MATIC+の発表は2020年3月に行われたEクラスセダンのビッグマイナーチェンジに併せたものだ。
AMGを冠したEクラスセダン
同モデルは、ご存じの通りEクラスセダンをベースとして、よりパフォーマンスを高めたモデル。Eクラスセダンは、世界でもトップクラスのインテリジェンスを持ったセダンとして名高い。W213型と呼ばれる現行モデルは2016年に発表以降、堅調なセールスを続けている。E 200 AVANTGRADEを始めとして、多彩なラインナップを持つEクラスセダンだが、今回マイナーチェンジが発表された新型AMG E63は、そのトップグレードに当たる。
マイナーチェンジで括るのはもったいない改良
今回の改良で、エクステリアにも大幅な変更が加えられている。
まずは、フロントフェイスの刷新だ。元々アグレッシヴなデザインを採用している近年のメルセデスだが、新型AMG 63には、より存在感を強調する垂直12本のルーバーを用いた新しいデザインのグリルが装着された。同時に、オールLEDのマルチビームヘッドランプを採用し、いい意味で”コワモテ”となった。さらに、フェンダーアーチも広げられ、身をひそめるエンジンを強調するためのパワーバルジを備えるボンネットフードには筋肉質な丸みが与えられた。
また、フロントバンパーには大口径のエアインテークを3つ採用。リップスポイラーを装着すると共に、ハイパフォーマンスモデルのAMGであることを主張する新しいジェットウイングデザインが与えられた。
リアデザインの変更は、今回のマイナーチェンジに伴うエクステリアデザインの変更の中では最も顕著だ。従来型では楕円形を採用していたテールランプはシャープな横型に変更され、トランクリッド側にまで回り込むようなデザインとなった。トランクリッドスポイラーを装着し、リアバンパーの下部にはグロスブラック塗装が施される。リアビューを彩るマフラーの90mm径ツインテールパイプもニューデザインだ。
運転席に座るだけで速さを予感させる
インテリアは、エクステリアに引けを取らないスポーティな仕上げだ。ナッパレザーを採用したスポーツシートにはAMGバッジが取り付けられ、ツインスポークのAMGパフォーマンスステアリングホイールも新デザインが用いられている。
このステアリングには、今回のマイナーチェンジでドライバーがステアリングを握っているか/そうではないかを検知するセンサーが装備された。エンジンが掛かっているのにドライバーが一定時間ステアリングを握っていないと判断すると警告を発し、それでも状況が変わらなければAMG E63が緊急ブレーキアシストを作動させる。
またコックピットは、先進性を感じさせるデジタルコックピットとなった。インストルメントクラスターとマルチメディアディスプレイを独立して表示するのではなく、1枚のガラスバーで融合させることで、使い勝手も向上。メインディスプレイをワイド化することで、視認性もアップしている。さらに、モダンクラシック・スポーツ・スーパースポーツという3種類の表示スタイルを採用することで、ドライバーがより運転に集中できる環境を構築することが可能になった。
“フツウ”じゃ物足りないアナタへ
パワートレーンは、AMGらしくモンスターユニットと呼ぶに相応しい。搭載される4.0L V型8気筒ツインターボエンジンは、スポーツクーペAMG GT クーペ譲りであり、最高出力571hp、最大トルク76.5kgmを発揮。0-100km/hを3.5秒で走り抜け、フルスピードは250km/hにまで達する。
このエンジンに組み合わせられるのは、パドルシフト付き9速のAMGスピードシフトマルチクラッチテクノロジー 9Gだ。駆動トルクの可変配分を可能にするフルタイム4WDの4MATIC+となる。
また、更なる性能を求める欲張りなユーザー向けに、新型AMG E63にはグレード Sが用意された。搭載されるV8のツインターボエンジンはよりハイスペックなものへとチューニングされ、最高出力612hp、最大トルクは86.7kgmにまでボアアップされる。標準グレードのスペックに対して、41hp、10.2kgm引き上げられる数値だ。
このパワーアップにより、フルスピードは300km/hとなり、0-100km/h加速も標準グレードに比べて0.1秒速い3.4秒になる。さらに、Sには走行モードにドリフトモードを標準装備した。マニュアルモード時にはRACEモードへの切り替えも可能にしており、ドリフトモード作動時には後輪駆動へ切り替えられ、よりスパルタンな走りを実現する。
人気モデルであるEクラスセダンのトップグレードとして、君臨する新型AMG E63。その印象は、筋肉質な格闘家がカッチリとしたスーツを着こんだようなものに近い。やり玉に挙げて少し申し訳ないような気もするが、5.2L V型10気筒エンジンを搭載するランボルギーニ ウラカンでさえ、最高出力610ps/最大トルク57.1kg・mなのだから、新型AMG E63とSがどれだけの怪物なのか数値で分かるはずだ。新型AMG E63もまた、羊の皮を被った狼なのである。