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Y32シーマ

日本が湧いたバブル経済。これまでにない好景気の終わりが見えつつあった頃、初代Y31型シーマのモデルチェンジが発表された。

このモデルチェンジに、世間は騒然となる。当然だろう。「シーマ現象」として社会現象を引き起こしてしまうほど売れた初代シーマが、たったの3年8ヵ月という異例のショートスパンでお役御免となってしまったのだから。

このモデルチェンジには、日産の思惑が見え隠れする。経営陣としては、セドリック/グロリアの派生モデルの位置づけでしかなかったY31型シーマを完全な独立車種とすることで、ブランディングしたかったのだろう。

さらに、Y31型シーマとほぼ同期であるトヨタの8代目S13型クラウンや初代XF10型セルシオの影も、モデルチェンジの速さに拍車をかけた。

シーマは、Y32型に代替わりするにあたり代名詞でもあったターボを捨て去り、エンジンをV6ユニットからV8ユニットへ引き上げた。これは、クラウンやセルシオに搭載されるV8ユニットへ対抗するための施策だろう。結果Y32型シーマに搭載されたのは、総排気量4130cc 4.1L V型8気筒エンジンとなる。

この変更には、否定的な意見も少なくなかった。

Y31型とY32型、2つのモデルのエンジンと比べてみると、Y31型に搭載されていたV6ユニットは最高出力255ps/6,000rpm 、最大トルク35.0kgm/3,200rpmだったのに対し、Y32型に搭載されたV8ユニットは、最高出力270ps/5,600rpm、最大トルク37.8kgm/4,000rpmを発生させる力強いユニットだ。数字だけみれば間違いなくアップグレードだ。

しかし、絨毯のように柔らかいサスペンションをターボの加速によって大きく沈み込ませながら加速していく――そんな、荒々しい走りこそシーマの持ち味だと信じて疑わなかった層が一定数いたのだ。

このことは、Y32型がデビューした2年後の1993年に行われたマイナーチェンジにより、Y31型が搭載していたターボエンジンと同様のVG30DET型V6ターボエンジンを搭載したグレード ツーリング シリーズが追加されたことからも明らかだろう。

そうしたテコ入れがなされたものの、結局のところY32型は先代Y31型の人気までは引き継ぐことはできなかった不遇のモデルとなった。

1991年にはライバルであるクラウンもフルモデルチェンジ、同時に誕生したスポーツセダン・アリストを同時に相手にせねばならず、セルシオの存在もまた大きく立ちはだかった。さらに、ジャガーのような英国路線へ舵を切ったエクステリアやインテリアなどから「大人しくなってしまった」との声も多く、販売は低迷することになる。

圧倒的な人気を誇ったY31型があっという間に市場から姿を消し、1991年のデビューからY33型へモデルチェンジされるまで粛々と戦い続けたY32型シーマ。

生産終了後、ドレスアップやカスタム車のベースとして人気に火が付いたというのも、なんとも皮肉な話である。

とはいえ、シーマ本来あるべき姿である高級乗用車として、日産の最高級をおごっていたのも事実だ。エンジンの大型化もデザインの変化も、すべてシーマが挑戦した結果なのだということを忘れてはいけない。

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