ランドローバーのレンジローバー ヴェラールが日本上陸を果たしたのは2017年7月のことだった。アヴァンギャルドなレンジローバーとキャッチフレーズを掲げ、堂々と姿を魅せたヴェラールはSUV史上、最も優雅なSUVとして評されている。ヴェラールは、なぜそう呼ばれるようになったのか?その理由に迫る。
レンジローバー ヴェラールのプロフィール
まず始めにヴェラールの素性を明らかにしておこう。レンジローバー ヴェラールは、ランドローバー レンジローバーブランドに置ける4番目のSUVとして登場した。ポジションとしては、イヴォークが末っ子、次男のスポーツの間に挟まれる形だ。
2017年に発表された初代モデルが、現行モデルにあたりボディサイズ全長4803mm×全高2032mm×全幅1665mm、ホイールベース2874mmで、本体価格も税込みで718万円~と、サイズ・価格共にミドルクラスだ。
モデル名の『ヴェラール』とは、初代レンジローバーの試作モデルが源流だ。日本語で「ヴェールで覆い隠す」を意味するラテン語の“valare”から取って、「VELAR」と名づけられていたことに由来する。
そんなヴェラールは、販売から1年後の2018年には最も美しい車に贈られる「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー2018」を受賞。名実共に、世界一優雅なSUVとしても地位を確固たるものにしたのである。
無駄を削ることこそ美徳
さて、ではヴェラールはなぜ美しいのか?それは、このモデルに与えられたスタイリングを表現する「リダクショニズム」という言葉で説明することができる。このリダクショニズムとは、「還元主義」と訳される。
そもそもレンジローバーブランドのモデル達は、これまでもシンプルさ故の美しいデザインとなっていたが、ヴェラールではそのシンプルな美しさを更なる次元に高めているのだ。
車に興味がない人が見ればのっぺりとした面で構成されたエクステリアは、その実無駄なプレスラインや煩雑に見えうるディティールを全て削り落とした結果生まれた面だ。
そして、それはヴェラールに搭載された新機能でも説明することが可能で、ドアロック時や時速8km/h以下での走行時に、外装ドアハンドルが格納されるデプロイアブル・ドアハンドルもヴェラール・デザインのコンセプトを如実に反映した機能だ。
本格的なクロスカントリー4WDのような空気をまとった車が欲しければ、メルセデスのGクラスやジープのラングラーを買えば良い。クロカンとしての機能性を追求したモデルなら、他にも選択肢は多くある。
もちろん、ヴェラールが機能的ではないという意味ではない。ランドローバーが生み出したSUVの名に恥じない悪路走破性や居住性はしっかり確保しているし、他メーカーのモデルに対しても一歩も引けを取らないからだ。
エクステリアだけでは満足しない
美しいのはエクステリアデザインだけでなく、インテリアもまた然りだ。タッチスクリーンやコネクティビティ機能の進歩によって、物理スイッチが減り、以前ほどゴテゴテと“煩い”ダッシュボード周りは減っている。
しかし、ヴェラールのそれは、他のモデルとは比較にならないほどに“静か”だ。センターに配置された2段の10.2インチタッチパネル周辺は、レンジローバーの次世代インテリアを言葉少なめにアピールする。ダイヤル式のシフトレバーすら、ちょっとしたアクセサリーのように見えてくるだろう。
さらに、モダンな雰囲気でまとめあげるため、ヴェラールのインテリアには新たな挑戦として初採用のマテリアルが採用されている。
それが、デンマークの高級生地ブランドであるクヴァドラ社製のリサイクル素材とウールを織り込んだシート表皮だ。レザーシートも設定されているが、ヴェラールにはこのプレミアムテキスタイルが良く似合う。
ヴェラールにとって、美しさを表現するのはエクステリアだけではない。インテリアも、またリダクショニズムを発表する舞台なのである。
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ヴェラールの登場によって、レンジローバーブランドのデザインはSUVの中でも一歩とびぬけた存在となった。まさに、アヴァンギャルドなモデルだ。そういった意味でもヴェラールは、今後のSUVデザインのけん引役となり得る一台なのかもしれない。