2020年10月28日、ジャガーのコンパクトSUV『E-PACE』のマイナーチェンジが発表された。E-PACEは、2017年に販売を開始したモデル。コンパクトパフォーマンスSUVをコンセプトに開発され、車格的にいえばF-PACEの下に位置づけられている。
今回の改良では、主にデザインの変更とパワートレーンのラインナップ拡充が図られた。
コンパクトSUV E-PACEにPHEVが追加
E-PACEのラインナップに、新しくP300eが追加される。これは、最高出力200PSを生み出す1.5Lの直列3気筒ガソリンエンジンに、最高出力109PSを発生させるモーターを組み合わせたPHEVシステムを採用したモデルだ。このPHEVシステムをリアアクスルに搭載し、0-60mph加速を6.5秒という俊足に仕立て上げた。単純な速さだけではなく、EVモードでの航続可能距離をおよそ54kmとし、環境性能の高さもアピールする。
直列3気筒のガソリンエンジンは、いわゆるダウンサイジングエンジンだが、その実力は折り紙付きだ。
まず、第一に軽い。直列4気筒エンジンと比較して、約33kgも軽い。自動車の部品にとって、軽さは性能を引き上げる重要なファクターだ。
新型E-PACEは、この軽い直3エンジンをもって、低フリクションとパフォーマンスを両立。走りの良さは言わずもがなだろう。
加えて燃費性能も高い。さらに、直3エンジンに最適化したアルミニウム製のシリンダーヘッドをエキゾーストマニホールドと一体化。レスポンスを飛躍的に高める。
昨今のハイブリッドモデルでお約束となっているように、バッテリーはフロア下に搭載。15kWhのリチウムイオンバッテリーを採用し、最短30分で充電量0%から80%までの急速充電を可能とした。
同時にマイルドハイブリッドモデルもお目見え
パワートレーンの拡充はこれだけに留まらず、ガソリンおよびディーゼルモデルに「MHEV」と名づけられたマイルドハイブリッドシステムを展開する。
次世代の2.0L 直列4気筒インジニウムディーゼルエンジンと、同じく2.0L 直列4気筒のインジニウムガソリンエンジンにMHEVを搭載。インジニウムエンジンといえば、ジャガー・ランドローバー社がフォードモーターのPAG部門から離別したことを受け、2015年より採用を始めた完全自社開発の新設計エンジンだ。
このインジニウムエンジンに、マイルドハイブリッドシステムを組み合わせることにより、減速/ブレーキング時に回生エネルギーを効率的に発生。搭載される48Vのチリウムイオンバテリーに蓄えることで、優れた環境性能を手に入れた。
エントリーグレードとなるFFモデルには最高出力163PSを発生させる2.0Lの直列4気筒ディーゼルターボエンジンを採用。最高出力204PSの2.0L 直列4気筒ディーゼルターボエンジン搭載モデルにもMHEVシステムを採用し、それぞれに9速のオートマチックトランスミッションとAWDを組み合わせた。
ガソリンモデルとなる2.0Lの直列4気筒ガソリンエンジン搭載車は、全車でMHEVを用いたマイルドハイブリッドとなる。
グレード毎に、最高出力200PSから最高出力249PS、最大で最高出力300PSとなり、ディーゼルエンジン搭載モデルと同じく9速のオートマチックトランスミッションにAWDの組み合わせだ。
より上品に、よりラグジュアリーに
エクステリアのことにも触れておくと、新しいE-PACEは強い押し出しとラグジュアリーさを向上させた。
フロントフェイスのバンパー開口部は拡大。印象的なブレード形状の加飾を埋め込む。フロントグリルのメッシュデザインも新しくなった。採用されているダイヤモンドを象ったディティールは、ジャガーのヘリテージロゴをモチーフとしている。カラーは、落ち着きのあるクローム仕上げだ。
さらに、ヘッドランプはデザインをリニューアルしたLEDヘッドランプを採用する。LEDをアルファベットの“J”形状に折り曲げた、特徴的なダブルJデイタイムランニングライトとした。このヘッドランプには、オプションとして解像度と視認性を向上させるピクセルLEDテクノロジーも追加可能だという。
また、インテリアではコネクティビティとインフォテインメントシステムの強化に注目だ。ジャガーラインナップの上位モデルに採用されている最新のインフォテインメントシステムであるPivi ProをE-PACEにも採用。
ダッシュボードセンターに11.4インチのHDタッチスクリーンを装備し、より直感的な操作を可能にする。このスクリーンは、特殊ガラス制のタッチスクリーンであり、まぶしさと指紋での汚れを低減する特別なコーティングが施される。
使い勝手の部分でも見直しが図られており、ドライブセレクターの前方に配置された収納スペースへも手が届きやすくなった。ドライビングポジションを可能な限り変えずに済む、というわけだ。
さらに、ステアリングホイールも新形状になった。各スイッチ類や金属マテリアルを用いたギアシフトパドルはジャガーラインナップのI-PACEに影響を受けたデザインとなっている。
シートのヘッドレストにはエンボス加工によりリーピング・ジャガー、すなわりリーパーのロゴエンブレムが施される。
新しさはもちろん、ジャガーの伝統を思い浮かべてしまうような室内となった。
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新しくなったE-PACEは、英国ジャガーが代々受け継いできた「上品さ」が大きく盛り込まれたように感じる。もちろん、従来型がそうでなかったという意味ではないが、コンセプトのようなコンパクトパフォーマンスSUVとしての側面が強いモデルから、一皮むけたような印象を受ける。
新型E-PACEは、オトナのためのSUVに生まれ変わったのかもしれない。