上信越自動車道小諸ICより、車でおよそ10分。『中棚荘』は中棚温泉を前身とし、明治31年に創業。明治の文豪・島崎藤村ゆかりの宿として当時の趣をそのまま残した老舗旅館だ。
レトロな構えの大正館は、中棚鉱泉時代の面影を随所に感じられる、ロマンに満ちた建物。島崎藤村ゆかりの「藤村の間」を始め、フロア1階と2階に合計9室を備える。「遊子の間」や「しろがねの間」といった個性的な部屋の名前は、藤村が執筆した『千曲川旅情の詩』の中に登場した、詩から取ったものだ。
中庭には、プラタナスやヒマラヤ杉といった木々が茂る。桜の季節にはライトアップされ、幻想的な光景が広がる。春夏秋冬、移り変わる景色を眺めるのも大正館ならではの過ごし方だ。
一方、平成館には1階にモダンな和洋室が6室、2階には和室が12室用意されている。女将が毎朝活ける花がさりげなく飾られ、内装は新鮮かつ簡素。室内の内風呂は温泉になっているため、好きな時にのんびりと湯浴みを愉しむことができる。
食事は、朝夕共にレトロな大正館の小部屋で。総料理長自ら腕を振るう料理は、素朴ながら繊細な創作会席料理だ。大きなホテルや旅館では決して味わえない、一切妥協のないこだわりの料理を堪能しよう。