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【ヒュンダイ FCVネッソ】韓国が生み出した、日本の自動車メーカーの脅威となるか

ヒュンダイが日本市場を撤退したのは11年前の2009年にさかのぼる。2002年開催のFIFAワールドカップや韓流ブームなどで注目を浴びるタイミングはあったが、当時は国産メーカーと戦えるだけの実力がなく、あえなく撤退することとなったのだ。

そんなヒュンダイだが、現在では世界で700万台以上の新車を販売するグローバルブランドとして名を上げている。欧州や北米といった主力市場はもとより、新興国市場でもコストパフォーマンスに優れて、なおかつデザインの良いクルマとして人気を博している。日本ではさまざまな事情により現在では乗用車の新車販売はされていないが、世界では日本の自動車メーカーをおびやかしているのだ。

しかし、ヒュンダイはいまふたたび日本市場を虎視眈々と狙っているようだ。例えば、2020年2月に開催された業界向けの展示会でネッソという一台の燃料電池車(FCV)を展示した。これはなにを意味しているのだろうか?

実はFCV大国の日本

ネッソがどのようなモデルなのか語る前に、FCVについてどのような物なのか知っておく必要があるだろう。

FCVとは、一言で言えば水素と酸素の化学反応を利用して推進力を得る車だ。モーターと燃料電池、水素タンクを機関に備え、水素と酸素の化学反応によって生成された電気エネルギーを用いることでモーターを回す。

従来のガソリンエンジンのように、有害なガスが排出されないためクリーンなエンジンであるとともに、電気自動車(EV)のように長時間の充電も必要ない。一方で、水素ステーション等のインフラ整備が万全でないことから、ひろく一般に普及しているとは言い難いのが現状である。

とはいえ、日本は世界の中でも最もFCVを走らせるインフラが整っている国ではあるのだ。欧州ではディーゼルゲート事件の反動から電動化に躍起になっているし、北米ではシェールガス革命によって原油価格が値下がりしていることから、以前ほど低公害車をバックアップする状況ではない。しかし、日本は官民一体となって水素ステーションの拡充を進めたことで、いまでは世界で最も水素ステーションが充実している国となっているのだ。

FCV技術をけん引するリーダーとして

2020年現在、FCVを市販化しているのは、トヨタ、ホンダ、ヒュンダイの3ブランドのみだ。トヨタのミライとホンダのクラリティ フューエルセルは、いかにも空力性能に優れたファストバックスタイルなのに対し、ヒュンダイのネッソははやりのSUVスタイルだ。先進性を押し出したミライやクラリティ フューエルセルに比べて、より大衆受けするデザインと言えるだろう。

ネッソのボディサイズは、全長4670mm×全幅1860mm×全高1630mmとなっており、同クラスのSUVモデルと比較しても短い全長と、低い全高が特徴的だ。搭載しているモーターの最高出力は113kW、最大トルク395Nmを発生させる。およそ5分でフル充填することができる水素タンクを3本搭載しており、航続可能距離はWLTCモードで820kmだ。トヨタのミライはJC08モードで300kmの航続だったので、実に倍以上のクルーズが可能になっている。

ちなみに神奈川県海老名市に開設された商用水素ステーションでは1000円/kgで販売している。ネッソの水素タンク容量が3本合計で6.33kgなので、カラっぽの状態から満タンにするためには6000円ちょっと掛かる計算だ。

派手さではなく先進性で印象付ける

エクステリアに目を向けて見ると、ボディサイズこそ一般的なSUVと同等だが、見たものに「なんだあれは?」と思わせるような先進的なタッチが随所に見て取れる。LEDを採用したナイフで付けた傷跡のようにシャープなヘッドランプはその最たるものであろう。レクサスのようにスピンドル形状のフロントグリルはアグレッシブで、フォグランプは、ヘッドランプに寄り添うように一体感を強調している。

ボディサイドにはそこまで象徴的なキャラクターラインは入れられていないが、ドア下部にはリアまでぐるりと囲むようにマットなサイドシルを備える。SUVの力強さを主張するのも抜かりないデザインだ。

リアにロゴとして入れられている車名、ネッソとはデンマークの島に由来する。古代ゲルマン語では水の精霊となり、ラテン語では結合を意味する。燃料電池車としてのネッソを最も良く表現したネーミングだ。

前述したように、FCVという分野においてヒュンダイはトヨタやホンダと並んで世界をけん引している。しかし、輸入車ブランドという宿命から、コストパフォーマンスが優先されるコンパクトカーが得意のヒュンダイは、輸送費を上乗せせざるを得ない分、日本の自動車メーカーにかなわない。しかし、FCVであれば、トヨタやホンダも日本市場では年間1000台未満の販売台数しかない”挑戦者”である。デザイン、パフォーマンスに優れたネッソはトヨタやホンダと互角の勝負ができるかもしれない。また、なにより水素ステーションのインフラを享受できるというメリットもある。

3月にネッソが展示されたのは、まさに日本市場再復帰を意味していると言えるだろう。そしてそれを裏付けるかのように、6月15日にはヒュンダイ・ジャパンが公式ツイッターアカウントを開設している。

ヒュンダイの日本市場復活とともに、ネッソが日本の道を走っているのを見る日も近いのかもしれない。もしそうなれば、FCVという分野において日本の自動車メーカーの驚異となることは間違いない。

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