日本自動車販売協会連合会によれば、現在マツダのラインナップで最も売れているのがコンパクトSUV CX-30だ。SUVというカテゴリ自体はどのブランドも売れ行きは好調を堅持しているが、それほどまでにCX-30が受け入れられた理由はなんなのだろうか。今回は、CX-30が一躍大人気モデルとなった理由の真相について探っていく。
CX-30が誕生した背景と、衰えを見せないSUV人気
SUVは、今の市場の大本命だ。その加熱ぶりは、あのランボルギーニさえも ウルスをデビューさせているし、それに対抗するようにイタリアの名門フェラーリも、2022年にSUVを発表する予定だという。
新しいSUVと聞けば嫌でも注目を浴びるような状況の中、2019年にマツダは新型SUVをデビューさせた。それがCX-30である。マツダが車名を数字へ改名する方針を採って以降、2つ目の新型車だ。
CX-30は、世界的にも人気が高いコンパクトSUVにカテゴライズされる。プラットフォームは先だって発売されたマツダ3と共通しており、あちらはセダンかファストバックとなるがこちらはSUVと、イトコのような関係となる。
マジメな都会派SUVは、街乗りでこそ真価を発揮してくれる
コンパクトSUVを謳っているのだから、CX-30は当然街乗りを苦にしない。ボディサイズは、全長4395mm×全幅1795mm×全高1540mmにホイールベースは2655mmと、見た目とは裏腹に実際はもっとも引き締まったサイズだ。
このサイズ、マツダの他のモデルと比較してみると面白いことが分かる。まずは、イトコであるマツダ3と比べてみよう。マツダ3の全長は4460mmで、ホイールベースは2725mm。マツダ3の方が全長65mm、ホイールベースは70mmも長いのである。幅は同じで、全高に関してはさすがにSUVスタイルのCX-30の方が100mm高い。
しかしながら、全長とホイールベースの短さは特筆すべき点だろう。これにより、街中での取り回しが大きく異なってくる。なんといっても、立体駐車場にも楽に収まってしまうサイズだ。この絶妙なサイズ感は、CX-30の大きな武器のひとつとなる。
豊富なグレード展開と、新型のスカイアクティブエンジンに注目
CX-30は、グレード展開も豊富だ。ディーゼルエンジンを搭載するXD Lパッケージ・XD プロアクティブ ツーリングセレクション・XD プロアクティブを始めとして、ガソリンエンジン搭載の20S Lパッケージ・20Sプロアクティブ ツーリングセレクション・20S プロアクティブ・20S。さらに、新世代のガソリンエンジンであるスカイアクティブ Xエンジンを搭載するXLパッケージ・Xプロアクティブ ツーリングセレクション・Xプロアクティブがラインナップしている。全車で、2WD/4WDの選択が可能だ。
注目なのは、2020年1月に追加されたばかりのスカイアクティブXエンジンだろう。このエンジンは2.0L 水冷直列4気筒エンジン。ガソリンエンジンモデルに採用されている従来型のスカイアクティブGエンジンに比べて高い圧縮比を実現し、性能の面でもスカイアクティブGの最高出力156PS、20.3kgf・mよりも高い、最高出力180PS、最大トルク22.8kgf・mを発揮する。
また、スカイアクティブXでは、マイルドハイブリッドシステムを組み合わせることで、燃費性能にも磨きがかかった。WLTCモード計測で16.8km/Lとかなり優秀な数値だが、マイルドハイブリッドを持たないスカイアクティブGモデルでも14.8km/L~、ディーゼルエンジンなら19.2km/Lと、すべてのエンジンでクラストップの性能を誇る。
引き継がれて行く「深化した魂動デザイン」は、庶民の味方だ
エクステリアの美しさで話題を呼び、プラットフォームを共通するマツダ3にもCX-30のデザインは引けを取らない。ボディの伸びやかさを演出するための”面で見せる美”を強調したラインは美しさだけでなく、ブラックアウトされたホイールアーチとボディ下部をぐるりと囲むクラッディングパネルで、SUVらしいパワフルさを表現した。
インテリアは、マツダが掲げる「人馬一体」感を感じることができるようなデザインだ。運転席は、メーターや表示機器類がドライバーを中心に配置。ドライバーのポジショニングややペダルの位置など、ドライバーポジションを追求したコクピットはまさに車とひとつになった感覚で運転を楽しむことができる。
一方で助手席側はスッキリとシンプルな造りとなっており、居心地の良さを常に感じられる。定員は5名だが、特にフロントシートの安心感は抜群だ。
コンパクトだからといってプレミアムさを感じることができないワケではない、現に2020年4月時点でCX-30はマツダのラインナップで最も売れているモデルとなっている。
この数字は、最近のマツダの上質な車づくりに対する姿勢が勝ち取った結果だろう。ガチガチのクロカンでもなく、プレミアムブランドの高値の華でもない。CX-30は、多くのユーザーがマツダ車の良さに触れることができる機会を作った名車といえるのではないだろうか。