未だ衰えを見せないクロスオーバーSUVブーム。レクサスにおいてそれを象徴するのがRXだろう。デザイン性と居住性、機動性を持ち合わせたRXは、LSやESというコンベンショナルなプレミアムカーとともに次世代レクサスをけん引する役割を担うモデルだ。今回は、2019年に行われたマイナーチェンジで、RXがどのように変わったのか解説していく。
エントリーグレードと侮ってはいけない。RX300にはターボモデルならではのキャラクターがある
初代から数えて4代目となる現行RXがデビューした2015年、グレードはターボモデルの200tおよびハイブリッドエンジン搭載の450hの2つだった。それが現在のように450hL/450h/300というラインナップになったのは、2017年のことである。
200tから名称変更されたRX300は、RXシリーズの中で最も廉価なモデルだ。しかし、だからといってエントリーグレードという位置づけではない。他の兄弟達は3.5L V型6気筒ハイブリッドエンジンを搭載しているのに対して、RX300は2.0Lの直列4気筒エンジンにインタークーラー付きのターボを備えているが、これらはグレードに与えられた”役割”が異なる。
例えば、環境意識の高いユーザーならハイブリッドモデルがマッチしているだろうし、低排気量ターボならではの軽快な走りを求めるユーザーならターボモデルも悪くない選択だ。また、7人乗りの3列シートが必要なライフスタイルなら、ロングボディモデルという選択肢もある。つまり、RXにおけるグレード展開は、ライフスタイルごとの違いに対するものであり、価格の違いがそのまま質の違いに反映するというわけではないのである。
ターボエンジンでもレクサスらしい味付け
RX300に搭載される2.0L 直列4気筒インタークーラーターボ付きエンジンは、最高出力238PS、最大トルク35.7kgf・mを発生させる。いわゆる、ダウンサイジングターボだ。しかしながら、アクセルを踏んだ際に感じるパワーは充分であり、燃費も全長4890mm×全幅1895mm×全高1710mmのボディサイズを考慮すれば、JC08モードで11.8km/Lは良好だろう。
ボディ自体のスポット打点の追加や構造用接着剤の範囲拡大により増した剛性と、見直しが図られた足回りのセッティングで、走行時のゆすられ感も抑えられていて静粛性もアップしている。基本的に腰高かつ大型ボディを持つSUVでは、走行中のロードノイズや風切り音が気になるが、 。
次世代モデルらしくなったエクステリアと、利便性・機能性共に向上したインテリア
2019年に行われたマイナーチェンジは、少なくとも外見上は、マイナーチェンジというにはもったいないほどRXを大きく変えた。例えば、トレンドとなっているクーペスタイルのSUVながら、筋肉質でアグレッシブなデザインだったエクステリア。エッジを効かせた鋭さやインパクトはキープしつつ、フロントバンパーとリアバンパーは力強さとワイド&ローを強調。スピンドルグリルにはレクサスのイニシャル「L」を象ったブロックメッシュパターンが採用されている。
また、世界初となるブレードスキャン式アダプティブ・ハイビーム・システムを搭載する切れ長のヘッドランプでフロントフェイスは、よりスッキリと精かんな印象に変化。醸し出す雰囲気は、新世代のレクサスそのものだ。
一方で、インテリアは順当に進化したな、という印象だ。基本的なデザインには大きな変化は見られない。しかし、インパネ周りのマルチメディア関係は一新されている。まずは、モニターが12.3インチに拡大。操作もより楽になり、リモートタッチ式だったものが、タッチパネルだけでも操作できるように変更されている。同時に、モニターの位置自体を前方にずらすことで、利便性を向上させた。
SUVならではの居住空間は室内長2095mm、室内幅1590mm、室内高1200mmと広大の一言。ラゲッジスペースは553Lを確保している。それに加えマイナーチェンジでは、USB充電ソケットや収納箇所を追加。空間を有効に利用したインテリアは、荷物が大いにも困らないおおらかさを備えている。
RX300を知らずして、クロスオーバーSUVを語ることなかれ
4代目のRXは、レクサスのブランドを体現するコアモデルという役割を与えられている。2代目まではトヨタ ハリアーの北米市場向けモデルに過ぎなかったRXが、3代目にフルモデルチェンジされるにあたり、専用デザインを与えられて日本に帰ってきた経緯はLSやGSとも似た部分がある。
海外のプレミアムブランドを脅かし続けるLS、新時代のレクサスを象徴するスピンドルグリルを初めて与えられたGS。ならばRXは、ジャパニーズ・ブランドが生み出した究極のクロスオーバーSUVでなければならない――そんな期待が込められているのではないだろうか。
その期待感は、RXのコンセプトにも現れている。「RXでありながら、RXを超えていく」というコンセプト、往年の車ファンならなにか感じるはずだ。そう、かつてトヨタのフラッグシップモデルに君臨していた、セルシオの3代目のキャッチコピー「セルシオを超えるのは、セルシオだけ」をほうふつとさせるコンセプトが採用されているのである。
トヨタのセルシオは、初代モデルが登場した1989年以来、高級セダンのベンチマークとしてあり続けた伝説的なモデルだ。さすがに深読みしすぎかもしれないが、RXにもクロスオーバーSUVのベンチマークとしてあり続けてほしいという願いが込められているのかもしれない。