札樽自動車道朝里ICより、車でおよそ6分。『銀鱗荘』は「北の迎賓館」の異名を取る、小樽市の指定歴史的建造物にも指定された、現存する数少ない鰊御殿に宿泊できる宿だ。
江戸時代から昭和の初期にかけて隆盛を極めた鰊漁の大網元・猪俣安之丞氏が築造した個人邸宅が銀鱗荘の前身だ。
建物は、外観から豪奢そのもの。せり上がった庇が印象的で、館内に一歩足を踏み入れると熟練の伽藍師が手がけた精緻極まる美しい技巧が細部に見て取れる。とど松やせん、たもといった高級木材を贅沢に使い、正面には輸送技術も未発達だった時代に外国から取り寄せたという大きな花崗岩が。その他、ステンドグラスや彫刻が掘られた欄間など、職人が手掛けた芸術品には思わず息を飲む。
そんな銀鱗荘の客室は全部で17。明治時代に建築され、昭和初期に現在の場所に移転した本館に加え、増築された新館からなる。
中でも、本館の特別和室「高砂」は、他の客室とは一線を画す部屋だ。2間続いた広縁からは石狩湾を一望。欄間やふすま、床の間など、どこを見ても職人技が光る。さらに、部屋風呂は温泉だ。洗練された純和風の雰囲気に身をゆだねて、美しい景色を眺めるだけ。そんな休日があってもいいと思わせてくれる。