山形県米沢市で、1312年に開湯。湯治場としてもすでに300年以上の歴史を歩んできた白布温泉は、福島県の高湯・同じく山形県の蔵王と共に奥羽三高湯にも数えられる名湯だ。
そんな歴史ある温泉地開湯と時を同じく、創業したのが『湯滝の宿 西屋』である。正確な時期こそ判明していないが、少なくとも500年以上前には存在していたという、老舗中の老舗旅館だ。
世代を越えて受け継がれて来た建物は、景観重要建造物第1号として登録されている。屋根の茅葺や当時の空気をありありと遺す館内は、それ自体が「わびさび」の概念を具現化したものといっても過言ではないかもしれない。
そんな西屋の温泉には、白布温泉のシンボルともなっている滝湯が。西吾妻から滔々と湧きだす源泉を豪快に浴びる滝湯は、江戸時代中期に作られたもの。当時の原型を保ったままというのだから驚きだ。こちらは、宿泊客だけでなく日帰りでの利用も可能。わざわざ遠出をしても浴びる価値がある。
大浴場の湯船は、御影石を切り出して作った浴槽だ。こちらも江戸時代中期に作られ、温泉成分によって漆黒に変色している。シャワーやカランもなく、渡り廊下にも温泉が流れる総ヒバ材の独特なスタイルは西屋でしかお目にかかれない。