2021年3月15日、起亜(キア:現代自動車グループ)が、新型EVである『EV6』の情報を1部公開した。このEV6は、キアブランドしては初めてのEV専用車。今後登場する11台のキアEVの先駆けとなるモデルだ。
新しいプラットフォームは、ヒュンダイのIoniq5と共通
日本でこそ知名度が低いキアだが、世界的にみれば破竹の勢いでシェアを拡大しているメーカーだ。ヒュンダイと合わせたグループとしてみれば、2019年には88万台を売り、127万台を売ったトヨタにも迫る。
3列シートで最大8名の乗車が可能なミドルサイズSUV・テルライドは2020年にワールド・カー・オブ・ザ・イヤーにも輝いている。つまり、キアはすでに世界一の車を作るだけのノウハウがあるということだ。そんなキアは、2026年までに合計11台もの新型EVを世に送り出すと約束している。今回一部情報が明らかにされたEV6は、その最初のモデルなのだ。
これらの新型EVについて、キアはシンプルな番号が割り当てられた命名スキームに従って車名とするとしている。つまり、このEV6のように「EV」+「数字」がモデル名になるわけだ。これは、同グループであるヒュンダイも同様であり、「Ioniq」というサブブランドを用いて、番号を続けている。今年の2月23日に発表された、Ioniq5がそれにあたる。
共通点はそれだけでなく、キアのEV6とヒュンダイのIoniq5はE-GMPと呼ばれる専用の電気自動車プラットフォームを共通する。平たくいえば、2台は兄弟なのだ。
このEV専用プラットフォームが使われるのはこの2台だけに留まらず、キアが今後手がける11台の新型EVの内、EV6を含む7台にはこの専用プラットフォームが用いられるという。
独特な世界観を持つ、新しいキアデザイン
キアはデザインの変革に忙しいようだ。その一つの答えが、EV6のデザインである。これまで、いくつかのキアラインナップを取り上げてきたが、EV6のデザインは控えめに言っても大胆で、斬新だ。
緩い傾斜がつけられたフロントガラスから、滑らかに後方へ落ちていくルーフライン。キア自身がデジタルタイガーフェイスフロントと呼ぶマスクは、スポーティかつアグレッシヴだ。
リアへ回ってみると、横一文字でリアフェンダーへ向かって伸びるLEDテールランプが目を引く。尾羽をモチーフにしたというこのクラスターランプは、アストンマーティンのDBXを彷彿とさせるが、インパクトという面ではEV6に軍配が上がるだろう。キアのEV、しかもEV6であることが一目で分かるからだ。
また、インテリアは伝統的なキアデザインを受け継ぎつつも、チャレンジが見える。その1つが、センターコンソールの造形だ。
スタートボタンがセンターのスタックに沿うように入れられた、トリムを分割する45度角のラインである。この「角度」を付けたデザインが、ダッシュボードやドアトリムといったさまざまな場所に使われている。独特な捻じれが、車内に躍動的な雰囲気をプラスしていることが分かるだろう。これまでにないアシンメトリーなデザインが、キアEVのスタンダードになっていくのかもしれない。
続報が待たれる走行性能
パワートレーンやバッテリー容量に関してだが、まだ明らかになっていない部分だ。しかしながら、先に同じプラットフォームアーキテクチャを用いた兄弟車であると述べたヒュンダイのIoniq5のスペックから、ある程度予想は立てられる。
あくまで予想の範疇をでないものの、キアEV6が搭載するバッテリーパック容量は77.4kWh。800Vの動作電圧に加えて、急速充電器を接続することによりおよそ20分で80%の充電が可能となるはずだ。推定される航続可能距離は、最高で300マイル(およそ480km)ほどだろう。
駆動方式は後輪駆動および全輪駆動。前者は最高出力215PS、後者は302PSであると予想される。
以上のことから、2021年中盤の発売が見込まれている日産のアリアよりもやや控えめなスペックであることが分かる。日産 アリアの2WDモデルが最高出力242PS、航続距離は最大で450キロとしているからだ。
とはいえ、キアはコストパフォーマンスに優れるモデルを作るのに長けたメーカーでもある。先に挙げた3列シートを備えたミドルサイズSUV・テルライドも価格は日本円にして約340万円~と高性能かつ低価格を実現している。キアのEV6において、販売価格も明らかになっていないが、他のメーカーのEVに対して価格での優位性で勝負を仕掛けてくる可能性は十分にあるといえるだろう。
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2030年までに、EVやハイブリッド、PHEVの売り上げが全体の40%にまで達するとしているキア。今回発表されたEV6は、その尖兵である。新しいEV専用プラットフォーム、オポジットユナイテッドと名付けられた新たなデザインフィロソフィー。多くの新たな武器を携えて、キアがEV市場に名乗りを挙げる。キアの勢いは、今後まだまだ衰えそうにない。