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世界のライトウエイト・2座オープンスポーツの世界最量販車、マツダの「人馬一体」

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「マツダ・ロードスター」は世界で最も多くの人たちに愛用されている「コンパクト2座オープンスポーツ」だ。ふたり乗りの「ライトウエイトスポーツカー」として世界最量販モデルとしてギネスでも認定されている。

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 マツダの公式資料によると、マツダ(ユーノス)ロードスターは、1989年5月に米国で発売されて以来、2014年11月末の時点で「NA型」から「NC型」まで3世代の総生産台数は、94万9,471台。総販売台数は93万9,028台。4代目に移行している今、2016年4月に累計100万台を突破した。

■絶滅種“ライトウエイトオープンスポーツ”の救世主登場

 初代ユーノス・ロードスターは、バブル景気絶頂期、1989年2月のシカゴショーで発表、ひと足先に米国で「MX-5ミアータ」の名で発売された。日本での同年7月発表、9月から発売となった。日本では、マツダの新たな販売チャネルのユーノス店で発売されたため、この名を名乗る。

 ライトウエイトスポーツとは1960年代の英国を発祥とするカテゴリーのクルマで、その名のとおり軽くて小さなスポーツモデルだ。一般的に小排気量乗用車の既存メカであるエンジン、シャシーを可能な限り流用してつくられたスポーツモデルだ。オリジナルのボディの多くはオープンモデルだった。小型車から流用した基本メカを使っているので、財布の軽い若者でも手が届く、価格も“ライト“なスポーツカーだった。それが、米国市場の幅広い顧客に大いに受けた。

 大排気量サルーンやピックアップトラックが跋扈する米国自動車社会でライトウエイトスポーツが支持された訳はいくつか考えられる。ひとつは第2次世界大戦後、米軍兵たちが勝戦連合軍として欧州の治安維持のために駐留した。そこで、少しだけ裕福な米軍将校たちは、欧州自動車メーカーのライトウエイトスポーツを操る愉しさを覚えてしまった。そして、米本国へ帰還した将校の多くは、その英国製の小さなスポーツカーを求め、英国やイタリア・ブランドを中心に各メーカーが米国に輸出を始めたからだと云われる。

 1967年に公開された米映画「卒業」(日本公開:1968年)で、主演のダスティン・ホフマンが大学の卒業祝いにプレゼントされた小さな赤いオープンカー「アルファロメオ・デュエット(欧州名:スパイダー1600)」が疾駆するシーンが、名曲「サウンド・オブ・サイレンス」と共に思い出される。

 ところが、1970年代の半ばから安全基準や排気ガス規制の強化が進み、このカテゴリーのクルマはどんどん廃版になっていく。とどめを刺したのが1978年の第2次オイルショックで、ライトウエイトスポーツは絶滅危惧種となってしまった。

 軽量なオープンカーが駆逐され壊滅状態に陥っていた80年代半ばに、ライトウエイト・コンパクトを掲げて2座オープンスポーツのロードスターは開発が進められたが、開発陣のなかにも「果たして売れるのか」という危惧を抱えた者もいたという。

 1989年に、マツダはそんな不安を封じ込めてロードスターをデビューさせた。すると北米や英国をはじめとした欧米でロードスターは拍手をもって迎えられ、世界的なブームとなる。発売時にはすでに納車まで数カ月待ちというバックオーダーを抱えた。その後、世界中の多くのメーカーが競合車を登場させる端緒となったのである。

■可能なコストダウンとこだわり抜いたメカ

 登場したロードスターは全長×全幅×全高3,970×1,675×1,235mm、ホイールベース

2,265mmで、車重940~970kg。ファミリアのエンジンをFR用に改良し、RX-7のデファレンシャル使うなど、既存車のパーツを出来る限り流用してコストを下げて発売に漕ぎつけたクルマだ。

 前輪車軸の後ろ、フロントミッドシップに搭載したエンジンは、ペントルーフ型燃焼室を持ったボア×ストローク78.0×83.6mmの1,597cc直列4気筒DOHC16バルブで、電子燃料噴射装置を備え、9.4の圧縮比から120ps/6,500rpmの最高出力と14.0kg.m/5,500rpmの最大トルクを得た。当初、ギアボックスは5速MTのみだった。1993年のマイナーチェンジでエンジンは、排気量を上げた1.8リッターのBP型に換装。パワーもトルクも向上してさらに扱いやすくなった。が、軽快感が薄れたという声も大きく、テンロク4気筒・B6型の根強いファンも多い。

 サスペンションは前後共に不等長アームによるダブルウィッシュボーン式独立で、前後にスタビライザーを装着した。ステアリングシステムはパワーアシストされたラック&ピニオン式で、前輪ベンチレーテッドディスクブレーキ、後ディスクブレーキとした。スペックそのものに特段目新しさはないが、RWDスポーツとしての基本はしっかりと抑えた設計で、コストダウンを図りながらも、走りに関するメカには投資と時間、そして知恵がたっぷりと注ぎ込まれていた。

 開発チームが知恵を絞って時間をかけたのが、「人馬一体」をキーワードに掲げた走りだ。ドライバーの意のままに操れるハンドリングを目指したのだ。また、50:50の前後重量配分を達成するために、重量物をクルマの中央に寄せて、状況を選ばない足回りをつくった。

 ファミリアから譲り受けたB6型エンジンは前述のとおりフロントミッドに縦置き搭載。ガソリンタンクは一般的な後輪アクスルの後ろのトランク下ではなく、座席後部にレイアウトした。

 さらに前後ブレーキのレイアウトにもこだわった。ブレーキシステムの重量物であるパッドを含めたキャリパーをフロント側は進行方向の後ろに、リア側は前に配置して重量物を前後アクスルの内側に収めたのである。

 サスペンションを4輪ダブルウィッシュボーン式独立としたのも、走りにこだわった結果だ。他車メカニズムを流用するなら、フロントは一般的なマクファーソン式を洗濯しそうなところだが、人馬一体にこだわった開発陣はそうしなかった。また、マクファーソンに較べて部品点数が増えて重たくなりがちなダブルウィッシュボーンだが、ロードスター開発陣は重量増を許さなかった。流用によるコスト低減と走りへのこだわりがひとつにまとまった。それが、ロードスターなのである。

 このようにロードスター開発陣の“走りへの拘り”は、表に出にくいものだが、世界のライトウエイトスポーツを希求したユーザーは、敏感に嗅ぎ取った。だから、ロードスターは世界中でファンの心を鷲づかみして、売れたのだった。

■その後のロードスター

 初代ロードスター、NA型はマイナーチェンジや「M2-1002/1028」のような特別仕様車を輩出して、1998年までの長いモデルスパンを経て2代目「NB型」に生まれ変わる。

 NB型はボディサイズは初代と同等で、6速MTの採用、大径ホイール&扁平タイヤ、エアバッグなど安全装備の充実が図られたが、重量増は徹底して抑え込まれ、車重は990kg~1,100kgとなった。

 2005年、2度目のモデルチェンジでNC型が誕生。プラットフォームは刷新されRX-8をベースに開発され、車幅が1,720mmとなり初の3ナンバー車となった。搭載エンジンもB型からアテンザと同じ2リッターのL型に換装となった。

 2015年5月、現行の4代目ND型に換わる。全長×全幅×全高3,915mm×1,730mm×1,235mm、ホイールベース2,315mm。車重は990kgから。

この車重の軽さと、全長とホイールベースの短さが際立っている。これだけで、ロードスターの運動性能の特徴であるハンドリングの “軽快感”が伝わる。パワーユニットは、ダウンサイジングされた1.5リッター直列4気筒DOHC直噴ガソリン。そのアウトプットは、最高出力131ps(96kW)/7,000rpm、最大トルク15.3kg.m(150Nm)/4,800rpmとなる。第4世代は肥大化してきたモデルを初代返りさせたモデルである。初代からの大きな特徴である“ヒラリ感”を伴った軽快なハンドリングは引き継がれている。

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