2020年11月11日、BMWはデジタル開催となったイベントである#NEXTGen2020内で、新型EVである『iX』をワールドプレミアした。このiXは量産開発段階にあるとされ、2021年の市場投入を目指すという。
電動モデルのフラッグシップ
BMWがEVコンセプトカー・ヴィジョンiNEXTを発表したのが2018年開催のロサンゼルスモーターショーだった。今回発表されたiXは、iNEXTを量販車としたモデルなのである。
BMWにとってはi3に続く完全電動モデルであり、電動モデルであることを示すアルファベットの“I”と、シリーズのトップレンジであることを示す“X”を併せた車名が与えられている。BMWブランドにおける、テクノロジーのフラグシップという役割と使命が課せられたモデルだ。
サイズ自体は同社のSAVラインナップをトレース。デザインはiNEXTより受け継いだ。SAVらしい力強いシルエットながら、キャラクターラインは可能な限り削除。滑らかな面の広がりによって、タフさを表現する。
フロントグリルは、昨今BMWのアイコンになりつつある大型の垂直キドニーグリルを採用。他のEVモデルの多くがそうであるように、iXのグリルにもセンサーやカメラ、レーダーテクノロジーなどが内蔵されており、インテリジェンスパネルとして機能する。
また、ヘッドランプはブランド史上最も薄い。フルLEDが標準となり、オプションとしてハイビーム洋のマトリクス機能付きBMWレーザーライトが用意されている。
ヘッドランプと同様に、テールライトもスリムになっている。BMWにおける電動モデルのイメージカラーであるブルーのアクセントが入れられている。
多くの先端技術を搭載
車内空間は、カーボン素材を用いたプラットフォームの採用によりX7にも比肩する居住性と積載性を確保している。次世代の車らしいスマートなダッシュボードを備え、ヘッドレスト部分が一体化した専用の新開発シートを搭載する。このシートには、マイクロファイバーファブリックを始めとした再生プラスチックを用いているという。
センターコンソールにおいては、ラグジュアリーで機能的な家具であることを目指し、センタートンネルは不採用。代わりに、レッグルームやストレージコンパートメント用のスペースとした。
また、12.3インチのインフォメーションディスプレイと、フレームレスガラスを用いた14.9インチのコントロールディスプレイによってフルデジタルスクリーンのBMWカーブドディスプレイを構築する。
ダッシュボードにはBMWヘッドアップディスプレイのプロジェクターが内蔵され、2.5ゾーンオートエアコンは新設計となる。
そして、iXはヘキサゴン形状のステアリングホイールを装着する初のモデルだ。これは、ドライバーが多くの情報へのアクセスを用意にしつつ、操作性を確保する。
さらに、iXがデビューした暁には世界で最もインテリジェントなモデルとなる。これは、5Gの通信技術を用いた演算能力と、高い自動運転技術によって裏打ちされるものである。iXは、車というよりも走るコンピュータにも近しい存在なのかもしれない。
最高出力500ps以上を発揮
グレード展開に関しては最上位となる4輪駆動のツインモーター仕様のみが現在明らかにされている。モーターの出力は現段階では不明であるが、第5世代のBMW eDriveが採用され、2基のモーターにより最高出力500ps以上を発揮。最高速度は200km/hを越えるという。
100kWh以上のバッテリーを搭載するとし、一度の充電で航続可能距離は600kmを誇る。出力200kwでの急速充電にも対応し、バッテリー最大容量の8割を40分ほどで充電することが可能だ。10分の充電で、約120kmの走行が可能としている。
大型のバッテリーを搭載しているため、アルミニウムやカーボンをいった軽量な素材を用いているにも関わらず車体重量は2.5t。しかしながら、0-100km加速は5秒という加速性能を有している。
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販売時期こそ2021年内を目指すと予告されているものの、販売価格等は未定だ。前述したように、バリエーションについても不明である。iXは、アウディのeトロンやテスラのモデルXといった電動モデルのライバルとして送り出す、期待のハイテクフラッグシップだ。BMWラインナップ内でも、一部のプレミアモデルにも並ぶことを覚悟しなければならないかもしれない。