テルライドの2020年モデルは、2019年にデビューしたキアの新しい中型SUVである。3列シートを備えた7から8人乗りのクルマだ。同社のミニバンであるカーニバルを除けば、現在製造・販売を行っている最大のモデルとなる。
北米市場の開拓者
この中型SUVは、キアが北米で製造し北米のみで販売を行う、いわば地域限定モデルだ。
2020年4月に発表された、ワールド・カー・アワードにて2020ワールド・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。このワールド・カー・アワードは、世界三大自動車賞とも呼ばれており、マツダのCX-30とマツダ3を抑えての受賞であった。
また、テルライドは2019年2月に北米での販売を開始して以来、2020年4月時点で7万5430台を販売。新型コロナウイルスの影響により、数字は落ちこんだものの、月間平均販売台数を5387台(2020年4月時点)とするなど、キアによる北米攻略の足がかりとして大きな活躍を見せている。
埋もれないデザイン
エクステリアは、一目見てキアのモデルだと分かるデザインだ。
垂直方向に焦点を合わせたデザインフィロソフィーとヘッドランプを囲む正方形のオレンジ色のデイタイムランニングライトを備えたテルライドは、都会に馴染みつつ、その存在を希薄にしない。大型のタイガーノーズグリルは印象的で、力強い。リアウインドウを極端に傾斜させた、流行りのクーペスタイルではないのも好印象だ。
フォードのエクスプローラーやトヨタのハイランダー、シボレーのトラバースと競合するというのもうなづける。日本車では、テルライドのようなデザインは昨今ではほとんど見られない。強いていうなら、ミツオカのバディがそれにあたるだろうか。そういった意味では、このテルライドはラグジュアリーなSUVであるとともに、硬派なSUVだといえるかもしれない。
選択できるパワートレインは1つだけ
テルライドはメカニズム的には、ヒュンダイのパリセードと双子に当たる。なぜなら、プラットフォームとエンジン、およびトランスミッションを共有しているためだ。
グレードは、LXに始まりS/EX/SXと4グレードで展開するが、全車で1つのパワートレーンを共通している。最高出力291hp/最大トルク36.2gkmを発生させるV型6気筒GDIガソリンを採用。
このエンジンに、8速のオートマチックトランスミッションを組み合わせ、5000ポンドの牽引能力を発揮するという。
また、アクティブオンデマンドAWDの採用により、道路と走行状況に応じてフロント/リア間でトルクを配分する。エコおよびスマートモードではフロントに100%。コンフォートおよびスノーモードではフロント80%リア20%。スポーツモードではフロント65%リア35%。ロックモードになると4輪全てが均等なトルク配分となる。
パワートレーンの選択肢こそないものの、走る場所を選ばないのもテルライドの強みの1つなのである。
インテリアの作り込みも世界基準
インテリアの質感は、ドイツのラグジュアリーな大型SUVに、負けずとも劣らない。
キャビン全体にいくつかの木目や木目調パネルが配置され、すべての金属はつや消しアルミニウムに似た見た目だ。もちろん、手触りも良い。
風通しが良く爽やかな高級感のあるインテリアが与えられたテルライドは、2020年のWardsAutoのインテリアリストベスト10にも選ばれている。素晴らしいデザインと、優れたユーティリティは折り紙付きというわけだ。
キアのSUVデザインはBMWのX7のように、本来SUVがあるべき姿とはなんなのか?という議題で、合理化とデザイン性の葛藤に頭を悩ませる必要はない。
2列目のキャプテンチェアは、十分なレッグスペースと各デバイスのための充電機能を備えている。USBポートは、前部座席のシートバックに配置された。
2列目と3列目のフロアはフラットでキャビン内を移動しやすい設計となっている。2列目はスイッチ操作によって素早く折り畳み、3列目への楽なアクセスを実現した。
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もし、今3列シートを備えたモデルを探しているのなら、実に多くの選択肢が存在する。
フォード、ホンダ、スバル、トヨタ、シボレー、そしてキアだ。
テルライドは、その全てでキアの存在感を大きく底上げした。
テルライドは中型SUVとして、家族全員にとって十分快適であるだけでなく、その大きなボディををはるかに上回る価値を持っている。