メルセデスベンツのフラッグシップサルーン『Sクラス』に、プラグインハイブリッドが設定される。明かされた販売時期は2021年で、欧州市場を中心にデリバリーされる予定だ。この改良により、コードネームW223は名実ともに最も先進的なメルセデスとなる。
大幅な性能向上が図られたPHEV
Sクラスのプラグインハイブリッドだが、今回の改良で初めて設定されるわけではないことをまず初めに言っておかなくてはならないだろう。
従来型のSクラスにも、プラグインハイブリッドは設定されていた。グレード名でいえば、S560eにあたるモデルだ。
これには、最高出力367hp/最大トルク51gkmを発生させる3.0L V型6気筒のガソリンツインターボエンジンに、最高出力122hpを発揮するモーターを加えたハイブリッドシステムを搭載していた。
これらに、9速の9Gトロニックプラストランスミッションを組み合わせ、容量13.5kWhのリチウムイオンバッテリーも積んでいる。0-100km/h加速は5秒。最高速度は250km/hというパフォーマンスと共にEVモードでの航続可能距離ろ50kmとし、欧州複合モードでの燃費は40km/Lと優れた環境性能を実現していた。
ここまでは、従来型のスペックだが、新型Sクラス プラグインハイブリッドは次世代のシステムを搭載する。
新しいPHVパワートレーンはメルセデス独自のEQパワーだ。従来型に採用されていた3.0LのV型6気筒ガソリンツインターボは、直列6気筒エンジンに置き換わることになる。モーターもトランスミッションと共に一体設計がなされ、新しいシステムは総合で最高出力510hpにまでパワーを引き上げられる。総合では476hpだった従来型と比較すると、34hpの出力向上だ。
さらに、バッテリーの性能も見直され、蓄電容量は28kWhと容量を拡大。この改良によって、EVでの航続可能距離がおよそ100kmと、約2倍の走行距離を獲得した。
一方で、メルセデス伝統の大パワーエンジンも継続する見込みである。6.0LのV型12気筒ツインターボエンジンも続投。
こちらは、マイバッハにのみ採用される。
ドライバーのベストな相棒を目指したAI機能
7代目となる新型Sクラスにも、当然メルセデスのMBUX(メルセデス・ユーザー・エクスペリエンス)が採用される。これは、2018年にデビューした4代目W177/V177型 Aクラスに初めて搭載された対話型のインフォテインメントシステムだ。
何かと話題になる人工知能を搭載し、自ら学習するというMBUXはシステム任せでも充分力を発揮してくれるだろうが、ユーザーの好みにカスタマイズすることも可能。タッチパネル式の高解像度ワイドスクリーンコクピットにAR技術を用いたナビディスプレイ。呼び掛けに応じて音声アシストが起動する音声コントロールなど、フレンドリーな最新技術がドライバーに快適さをもたらす。
また、世代でいえば2世代目となる新型SクラスのMBUXは、ハードとソフト両方で大きな進化を果たしている。いうまでもなく、デジタルでインテリだ。システムの中に、見えないハーバードの学生が住んでいるようなものである。インフォメインメントディスプレイは、有機発光ダイオード(OLED)を採用した12.8インチの大型ディスプレイとなり、最大では5つの画面を使い分けることでより簡単な操作を可能にする。
画面こそ増えるものの、物理スイッチは最低限に減らされる。従来型のコクピットと比べると、スイッチの数は27も減らされているという。ラグジュアリーカーの車内はミニマル化が進んでいる。そのため、新型Sクラスでは身振り手振りや画面へのタッチ、スマートフォンのようなスワイプ操作。
果ては視線でのコントロールも可能にする。
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デザイン面で今更触れることもないだろうが、他のメーカーにはない有機的な雰囲気はメルセデスならではだろう。
フロントグリルは拡大し、ヘッドランプは鋭くなった。全体的には先代からキープコンセプトだが、ドアハンドルの造形やキャラクターラインの入れ方で、滑らかさは一層増しているようにも見える。
7代目となって、プラグインハイブリッドの性能に磨きを掛けた新型Sクラス。
高級車のベンチマークの座は、まだまだ当分安泰のようだ。