ヒュンダイを支えるモデルと言っても過言ではないのが、フラッグシップSUV・パリセードだ。先日、2021年モデルが発表され、最上級グレードとなるカリグラフィーが追加されたばかり。
デビューしてわずか8営業日で2万506台の契約を記録するなど、“超”が付くほどの人気モデルである。現在は、納車まで半年待ちとまで言われているパリセードは、なぜそんなに売れるのか?秘密に迫る。
走る姿は陸上のクルーザー
ヒュンダイのパリセード、ファーストインプレッションは「とにかくデカイ」。迫力なら世界でも有数のモデルだろう。
特徴的なフロントのデザインが、迫力をさらにアピールする。上下に分かれた2つのランプを繋げて走るかの様に、デイライトのラインが流れており、上はターンシグナルランプ、下はフルLEDのヘッドライトという並びだ。
本場韓国では、妙な形のデイライトがタチウオルックとも呼ばれていたこともあったが、見慣れると、個性的な顔だと感じられるようになる。というのも、アグレッシブな造形のグリルや、このような“いたずら的”な要素があったとしても、パリセードの基本的なデザインは非常にバランスが取れているからだ。
また、現代のSUVデザインにおいて、テールゲートが大きく開かなければならないという風潮のようなものがある。そのため、リアにはあまり挑戦的なデザインをトライしづらい…というのが基本的な考え方なのだが、パリセードはここでも他にないデザインを採用している。
テールランプ自体はトランク面積を大きくするため、一見普通にありがちな縦で細い形をしているように見える。しかし、その隣に細かい光のラインを数多く入れることで、近くで見ると立体感を、遠くで見ると妙な雰囲気を演出している。
このデザインはフロントのデイライトとの連携性も主張する形にもなっているのだ。
圧倒的な居住性と落ち着いたインテリア
パリセードは全長4,980mm、ホイールベースも2,900mmを誇る。このサイズは居住空間の拡大に大きく貢献した。3列シートを備えるこのモデルは、2列目も、そして3列目までゆとりに溢れている。
また、リアシートはすべて電動で格納が可能であり、2列目のシートポジションを変えることで、大型セダン以上の足元スペースが確保できる。2列目のレッグスペースを確保しようとすると、どうしても3列目シートにシワ寄せが来てしまうものだが、ペリシェードにとってはそのようなこと問題にもならない。
インテリアデザインは大きな空間に従い、詰め込み感のない余裕のあるラインと形で構成されている。センターパネルモニターからメーターまで、区切りのない一枚続きのパネルで出来ており、スイッチ類やエアコンの送風口なども、派手なラインを極力抑えて整理した。
高級感がない、と言われればその通りだが、パリセードは「究極のファミリーカー」を目指したモデルだ。肩ひじ張らない気楽さが丁度いい。
しかし、それでも天井はスウェードで覆われ、ギラギラと安っぽいプラスチックが目立つワケでもない。装備の面でも、ワイヤレス充電やUSBポートに至っては7つも備えている。ドリンクホルダーに至っては車内に16箇所だ。
大きなクルマが必ずしも高級車である必要はない。そういうことは、ヒュンダイの高級車ブランド・ジェネシスに頼めばいい。
ディーゼルもいいが、自然吸気の良さに触れるべき
2.2Lのディーゼルエンジンも存在しているものの、北米市場に投入されているパリセードが搭載するエンジンは、3.8LのV6エンジンだ。この最高出力295PSを発生させるこのガソリンエンジンは、以外にも自然吸気エンジンである。
3.8Lと言う大排気量エンジンにターボが不採用というのは、近年では珍しいかもしれない。だが、このNAエンジンが意外なほどに心地よいドライブフィールを提供してくれる。違和感なく自然にアクセルワークに応えてくれるハイパワーは、ターボでは実現できない。
機械的にブーストを掛けてしまうターボエンジンとは異なり、自然な加速やエンジンサウンドを味わうことができる。扱いやすさ、という面でもターボに比べればNAエンジンが勝る部分だろう。
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ヒュンダイ パリセードは2015年にラインナップから姿を消した、ベラクルーズ以来の8人乗りSUVだ。2019年度、ヒュンダイの業績を大きく伸ばした立役者でもある。
K-POPが好きな人であれば、BTS(旧:防弾少年団)が2019年のビルボードミュージックアワード授賞式にパリセードに乗って登場したことを覚えている人もいるかもしれないが、日本でパリセードの存在を知る人は消して多いとはいえないだろう。
しかし、世界的に見れば300万円後半から購入できるコストパフォーマンスの高い合理的なモデルとして人気が高い。ことあるごとにヒュンダイの日本再上陸がささやかれるが、もしそうなればSUV市場の台風の目となるかもしれない。