2021年中旬ごろの発売が予定されている日産 アリア。発売されれば、2020年6月にデビューしたばかりの新型キックスと、フルモデルチェンジも控えているエクストレイルに続き、日産のラインナップにとって3モデル目のSUVとなる。
北米・欧州での展開や他メーカーのラインナップに比べれば、比較的少ないといえる日産のSUVだが、アリアは人気モデルとなることができるだろうか。今回は、アリアと、その”先輩”であるキックス、そしてエクストレイルと比較してみよう。ちなみに、エクストレイルは来年登場予定と目される新型ではなく、現行モデルである。
キックスより大きく、エクストレイルより小さい
まずは、ボディサイズを見てみよう。3台を並べて見てみると、キックスは全長4290mm×全幅1760mm×全高1610mm、エクストレイルは全長4690mm×全幅1820mm×全高1730mmとなっている。
一方、アリアは、全長4595mm×全幅1850mm×全高1655mmだ。
いわゆるセグメントで言えば、アリアとエクストレイルはCセグメント、キックスはBセグメントという位置づけと言えるだろう。アリアはセグメントこそエクストレイルと同じ分類となるが、ボディサイズ的にはキックスとエクストレイルの丁度中間サイズであることが分かる。
車格により、ユーザーに選択肢が増えるのは良いことである。キックスでは小さすぎて、エクストレイルでは大きすぎる。なら、アリアにしようというチョイスができるわけだ。
ただし、アリアは全幅がエクストレイルよりも30mmワイドだ。それが美しいデザインに寄与していることは明らかだが、現実的にはそのワイドさが駐車スペースや取り回しの問題を生むかもしれない。
パワートレインは三者三様
搭載するパワートレインは、3台ともそれぞれまったく異なるユニットを搭載する。ゆえに、比較する際の大本命いえるだろう。アリアはEV、キックスはe-POWER、エクストレイルはハイブリッドもしくはガソリンだ。
正直なところ、燃費性能や静粛性の面でハイブリッドはe-POWERやEVと比べるまでもない。通常のガソリンモデルならなおさらだ。そういった意味で、燃費に最重要視するユーザーからすれば、エクストレイルは自動的に選択肢から外れてしまうことになる。
燃費を比べてみると、キックスはJC08モードで30.0km/L(WLTCでは21.6km/L)。エクストレイルはJC08モードでハイブリッド車なら20.8km/Lとなる。
また、アリアでは65kWhバッテリーで最大450km、90kWhバッテリーなら最大610kmの航続を可能にするという。この数値は2WDモデルの値となっており、4WDになると20~30kmほど航続距離は落ちる。
そもそも、アリアには「燃費」の概念すらない。EVであるアリアにあるのは「電費」という考え方だ。ランニングコストでは、やはりアリアに軍配が上がりそうだ。
タフかポップか、そして未来か
ならば、スタイリングとエクステリアデザインはどうだろう。アリア・キックス・エクストレイルの中で、最もSUVらしいといえばエクストレイルではないだろうか。
流線形の流れるようなスタイリングをしたSUVが多い中、ボディの造形から悪路走破性の良さを最もよくイメージできるのがエクストレイルの良さだろう。
逆に、アリアとキックスは近未来的なデザインとなっている。特に、アリアはコンセプトモデルとほぼ変わらないデザインのまま、市場に投入されることになる。
EVであるアリアには、フロントグリルすら装着されない。代わりにあるのは、透明な「シールド」と呼ばれるパーツだ。その中央に刷新された日産のブランドロゴが配置され、アイコンであるVモーションはシーケンシャルウインカーを兼ねた白色の光で表現される。ヘッドライトなど、一瞬どこか探さなければならないほど薄型化され、スリークさでは群を抜いている。
アクティブでタフなエクストレイル。カジュアルでポップなキックス。そして、フューチャリスティックなアリアと、それぞれの志向性は異なるユーザーを産むだろう。
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アリアとキックス、エクストレイルを比較してみたが、パワートレーンやスタイリングではどれが最も優れているとは言い難い。となれば、残るは価格の面だ。アリアは、補助金や税制優遇を考慮したうえで500万円~位の価格設定となることが予想されている。
キックスは2グレード展開で、275万円からとなる。エクストレイルはガソリン車で248万円からだ。プラットフォームから完全新規開発のEVであり、新技術も数多く搭載するアリアが500万円なら、倍近くも差をつけて高額となる。
この価格差をどう見るかがポイントとなるだろう。500万円クラスといえば、価格なら日産のラインナップの中ではフーガやエルグランドと同格だ。
いずれにせよ、同じ日産ブランドの中でも、アリアは大きな選択肢をひとつ増やす存在であることは間違いないだろう。