2020年6月24日、フォルクスワーゲンはアルテオンの改良、およびシューティングブレークの追加とハイパフォーマンスモデルであるアルテオン Rの設定を発表した。今回は、新設定となるアルテオンのシューティングブレーク Rについて紹介しよう。
高貴さ漂うワゴンスタイル
フォルクスワーゲンのアルテオンといえば、2017年に国内デビューを果たした同ブランドのフラッグシップモデルである。パサートの派生モデルとして存在していた「CC」の後継モデルとして登場したそのボディスタイルは、流麗な4ドアクーペスタイルを継承している。
なお、今回発表された「シューティングブレーク」とは日本人にはあまり馴染みのない言葉だが、狩猟を現す「シューティング」と「ワゴン」を示すブレークを合わせたものだ。
現代では、一般的にスポーツクーペの要素を持つステーションワゴンを意味するが、元々は19世紀から20世紀初頭にイギリスで使われていた、狩猟用のオープン馬車のことを指している。
古来より、捕食を目的としない狩猟は貴族の嗜みだった。そのため、シューティングブレークの名前が与えられたモデルにはプレミアムカーが多い特徴がある。そのため、本来であれば、2ドアのボディスタイルに大きなリアゲートを備えたモデルの呼び名であったが、現在に至っては同様に4ドアモデルもシューティングブレークと呼ぶことが増えてきている。
前述したように、2017年に国内での販売を開始したアルテオンは、これまでファストバックのみがデリバリーされてきた。ここにきてシューティングブレークの追加は、まさに満を持してのタイミングだろう。フォルクスワーゲンが、ようやくメルセデスのCLAやBMW 3シリーズツーリングを迎え撃つ準備が整ったのである。
アルテオンにも待望の”R”が登場
アルテオンには、これまで上位グレードとしてRラインが設定されていた。しかし、今回追加されたRは、それをも凌ぐ性能を有するトップグレードとなる。
“Racing”のイニシャル“R”に由来するこのグレードは、2002年に発表されたゴルフR32に端を発し、脈々と受け継がれている。フォルクスワーゲンのラインナップでも、ハイパフォーマンスモデルにのみ与えられるRは、高性能であることの証明だ。
となれば、気になるのは搭載されるエンジンである。アルテオン シューティングブレーク Rには、第7世代のゴルフ Rに搭載されるユニットをベースとした直噴2.0Lの直列4気筒ガソリンターボのTFSIエンジンが採用される。
現時点では欧州仕様のエンジンスペックは明らかにされていないが、米国仕様では320PSと公表されているほか、日本国内を走るゴルフ Rは最高出力310PSを発揮するため、恐らく同等のスペックを有して発表されることになるだろう。もしそうなれば、通常のアルテオンの268PSに対して、52PSのパワーアップとなる。
このパワートレーンに、新開発のR パフォーマンス・トルクベクタリングが搭載される。レースカーに着想を得たというこのシステムは、走行シチュエーションに応じて、トルクを前後アクスル間で最適に配分することが可能だという。
シューティングブレークならではの美麗なライン
その端麗なエクステリアの中でも特徴的なのは、独自のデザインが与えられたBピラー後方に伸びる長いルーフラインだ。伸びやかなボディスタイルに、アクセントとなるシャープなウインドウを備え、ルーフからなだらかに傾斜するテールゲートが「シューティングブレークであること」をサイドビューから主張する。
また、パフォーマンスモデルであることの証明として、大口径のクーリングダクトを備えるフロントバンパーを装備。ブレーキキャリパーはブルーの塗装が施され、20インチのパフォーマンス・アロイホイールで足元を飾る。
一方、インテリアでは、現行型「トゥアレグ」をベースとして、さらに質感が高められている。特筆すべきは、新開発のデジタルコックピットが搭載されたことだろう。インフォテインメントシステムやエアコンをまとめるセンターコンソールと、ドアトリム上部をリデザイン。ドライバーの好みに合わせて表示内容をカスタマイズできるデジタルコクピットと合わせることで、操作性をより向上させた。
加えて、ディスプレイは高精細の10.25インチ画面となっており、エアコンはオート。ステアリングホイールも、タッチコントロール付きマルチファンクションステアリングとすることで、先進性も高められている。
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アルテオン シューティングブレーク Rは見た目こそ優雅なモデルだが、ふたを開けてみると、スポーティなドライビングカーに仕上がっている。フラッグシップの派生モデルともなれば、注目度の高さもうかがえるだろう。欧州では今秋の発売が予定されているアルテオン シューティングブレーク Rだが、日本への導入は未だ時期も明らかになっていない。