東京方面より、車でおよそ3時間半。東北自動車道白石ICで高速を降り、国道4号線を経由して県道254号線300メートルほど走ると、前方右側に『時音の宿 湯主一條』の趣ある佇まいが見えてくるはずだ。
宮城県の名湯・鎌先温泉が開湯して約600年。湯治宿を前身とする湯主一條は、クラシカルさとモダンさが共生する雰囲気が魅力の宿である。
自慢のお風呂は3種類。大浴場の目の前にぽっかりと口を開けている洞窟より湯を引く「露天風呂付大浴場」は、季節に応じた演出が堪らない。
新緑・紅葉・雪、春夏秋冬の景観が夜になるとライトアップされ、枝を茂らせる紅葉の木下には小川が。運が良ければ、野生のニホンカモシカが姿を見せてくれるかもしれない。
源泉の洞窟は、90年ほど前にたった一人の男が手彫りで掘り抜いたもの。つや肌の湯とも称される優れた泉質が肌を滑らかに包み込み、身も心も温めてくれる。
また、忘れてはならないが薬湯(やくとう)だ。1429年の開湯以来、多くの人々の傷や病気を癒してきた奥羽の名湯は、湯治場・鎌先温泉の源泉だ。湯船に浮いた茶色い湯花こそ、その証。伊達政宗も湯治に訪れたという本物の温泉に入れるだけでも、特別な体験となるに違いない。