上記のとろろ汁と並んで、静岡県の袋井に古くから伝わる郷土料理がたまごふわふわだ。名前だけを見るといささか可愛らしい料理に思えてくるが、その歴史は古い。
江戸時代初期の1626年、三代将軍徳川家光が後水尾天皇をもてなすために出した当時の最高級料理で、限られた身分の人間しか口にできなかったのだ。
また、このたまごふわふわは十返舎一九の手による東海道中膝栗毛にも登場、新選組局長・近藤勇の大好物だったと語り継がれている。
たまごふわふわ自体は、なんとも不思議な見た目をしている。端的にいうと、「卵で作った大きな泡の塊」だ。しっかりと泡立てた卵を熱い出汁をかけ、蒸すことでこの独特な見た目になるのだとか。
伝統あるたまごふわふわを味わうなら、『とりや茶屋』へ足を伸ばそう。昭和の初期に誕生したこの店は、既に創業80年を越えており、現在は三代目がその味を守り続けている。
こだわりの出汁で作るたまごふわふわは、ランチメニューと共に注文する人も多い。この店では440円というリーズナブルな価格でいただけるたまごふわふわ。当時の徳川家光が見たらどんな顔をするのか、想像するだけでも面白い。