南と北に伸びた新潟県のほぼ中央、十日町市や長岡を含む中越エリアはコシヒカリの有名な産地である。このエリアに伝わる郷土料理がへぎそばだ。
日本にそば処多しとはいえ、新潟県のへぎそばには他のご当地そばには見られない個性的な特徴がある。その特徴とは、つなぎにふのりと呼ばれる海藻を用いることだ。元々、織物の糊付けに用いていたふのりを使うことで、逆に水は一切使わずにそばを打つ。食感も独特なへぎそばであるが、海藻に由来するつるりとした食感はクセになるだろう。
ちなみに、へぎそばの「へぎ」とは蒸篭を指している。数人で囲んで、大きな蒸篭を一緒につつくのもへぎそばならではの食べ方だ。
そんなへぎそばの老舗として、創業100年を数える名店が『わたや』である。関越自動車道越後川口ICより、車でおよそ10分。
大正10年に創業したというわたやでは、創業当時から変わらない製法でへぎそばを作り続けている。こだわりの国産そば粉と、下北半島を産地とする最高のふのりを使って作るへぎそばは、コシの強さとのど越しの良さが光る。
伝統的なへぎそばを味わえるのも大きな魅力だが、時代に沿った新しい食べ方を提案しているのは4代目店主のへぎそばを全国に広めたいという心意気からだ。つけそばやぶっかけといった、それまでへぎそばの食べ方として一般的ではなかった食べ方をメニューに加え、新しい薬味として特産品である唐辛子・かぐら南蛮を用いたみどりのラー油を開発。幅広い世代で、気軽にへぎそばを楽しませてくれるのがわたやである。