2020年8月26日、シトロエンはベルランゴのカタログモデル先行予約を翌27日より開始すると発表した。ベルランゴは、MPV(マルチ・パーパス・ヴィークル)として人気のモデルだ。発売は10月1日より開始するという。
3グレードで展開する新型MPV
マルチ・パーパス・ヴィークル。少々聞きなれない言葉である。スポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)がアクティビティに特化した車だとすれば、マルチ・パーパス・ヴィークル(MPV)を名乗るベルランゴは、幅広い目的に使える便利な車――という、位置づけになる。
初代モデルがデビューしたのは1996年。累計販売台数は330万台を超え、シトロエンが移動の快適さとレジャーを楽しみたいユーザーに向けて送り出したモデルだ。
この新型ベルランゴは2018年に開催されたジュネーブモーターショーで初めて発表された。翌2019年には、カタログモデルの販売に先駆けた限定モデル「デビュー・エディション」を発売。オンラインのみで受け付けた事前予約は2度行われたにも関わらず、およそ5時間で埋まったという記録も残している。
今回、カタログモデルの発売を控えるベルランゴには、先行販売されたデビュー・エディションとほぼ同クラスの装備が与えられたグレード SHINEと、加飾等一部装備を取り払“ツール感”を強調したグレード FEELが設定された。
また、特別仕様車も同時にリリース。より装備を充実させ、マットオレンジカラーをアクセントとして備えるグレード SHINE XTR PACKが用意されている。
環境性能を向上させたクリーンディーゼルエンジンを搭載
新型ベルランゴに搭載されるパワートレーンは、PSAグループの最新鋭、シトロエンとしては初採用となる最新のDV5型クリーンディーゼルエンジンだ。
アイドリングストップ機構付きのこのユニットに、電子制御式8速オートマチックトランスミッションが組み合わせられる。最高出力130PS/最大トルク300Nmを発揮するこのエンジンは、ディーゼルならではの低回転から湧き上がる力強いトルクと、アクセルワークに機敏に応える軽快さを持ち合わせた。さらに、新しい排気浄化システムの採用により環境性能を磨き上げられている。
また、アイシン・エイ・ダブリュとのジョイントで生み出されたEAT8と呼ばれるトランスミッションは、変速のダイレクトさと高速走行時の燃費性能がウリだ。メカニズムの改善・改良・変更によりJC08モードで21.2km/L、WLTCモードで18.0km/Lの燃費性能を発揮する。
プラットフォームには、PSAグループが新開発した次世代プラットフォームであるEMP2を採用した。このプラットフォームがベルランゴのようなコンセプトを持つモデルに与える恩恵は大きく、フロントガラスを前に押し出し、フロントエンドは高くショートだ。さらに、フロントを短いオーバーハングとしたことで、取り回しの良さを向上させている。
個性的な収納機能を採用
パッケージングは、近頃の日本車には見られない独特なものとなっている。3サイズは全長4405mm×全幅1850mm×全高1850mmであり、正面と後方から見るとほとんど正方形のボックスだ。ルノーの現行型カングーに近いスタイリングだが、トヨタの初代bBを思い出してしまうのは日本人の性か。
さて、レジャーを楽しむ人のため生まれてきたベルランゴは、大型の開口部を持つリアドアと狭い場所でも開閉が容易な省スペースなスライドドアが採用された。搭載されるリアシートは等間隔の3座独立式となっており、それぞれ折り畳みが可能だ。ファミリー層の利用を見越して、ISOFIXのフックも備わっている。
また、収納機能も豊富に用意された。特徴的なのが、「Modutop」と呼ばれるパノラミックルーフと収納スペースを混合したルーフ部分の収納だろう。前方にトレイを設置し、中央部にはバッグインルーフというマックス14Lの収納スペースを確保した。
このModutopは収納としての役割を果たすだけではなく、サンシェードを装備している。夏場の車内温度上昇を緩やかにし、ドライブの雰囲気を盛り上げるムードライトも装備される。
ラゲッジは定員となる5名が乗った状態で597L、リアシートを全て折りたたむと最大で2126Lの広大な空間を確保した。ワンタッチでラゲッジをフルフラットにできるマジック・フラット機能もユーティリティを向上させている注目の機能だ。
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新型ベルランゴの本体価格は、FEELが312万円、SHINEが338万円、特別仕様車のSHINE XTR PACKが343万円となっている。個性的なスタイリングと多用途性にマッチするユーティリティ、力強いエンジンが1つになったベルランゴは、人気になるべくしてなったモデルだといえるだろう。他にはないセンスの良さを感じたいなら、マストなチョイスとなりそうだ。