フィアット・クライスラー・オートモービルがダッジブランドで製造するフルサイズピックアップトラック、ラムに最高のパフォーマンスを誇る1500TRXが追加された。6.2Lのスーパーチャージャー付きV8エンジンは、702馬力を発生させる。地球上で、最速のオフロードトラックが生み出されたのである。
6.2Lのスーパーチャージャー搭載OHV式ヘミV型8気筒エンジンを搭載。702馬力を発揮する
1500TRXは、フォードが製造・販売を手がけるピックアプトラック・ラプターF-150に対抗すべく開発されたモデルである。F-150は、北米のベストセラーだ。
現行モデルは、2017年に登場して以来、荒野の王者として君臨し続けてきた。今回そこに、ラムが1500TRXで挑戦した形となる。
450hpを発生させる3.5LのV型6気筒のエコブーストと呼ばれる直噴ターボエンジンに対抗すべくラム 1500TRXに搭載されたのは、クライスラーのSRTパフォーマンス部門によって開発された6.2Lのスーパーチャージャー搭載OHV式ヘミV型8気筒エンジンである。
国産車では見られない文字が並んでいるが、アメリカンなハイパワーモデルではOHV式を採用しているモデルが多く見られる。
世間一般では、OHV<SOHC<DOHCの順で効率が高くなる、と思われがちだ。しかし、アメリカのV型8気筒エンジンでは排気量を大きくしてOHVで出力を上げてしまえ、という考えが浸透している。
広い国土に広い道路を持つ米国では、大排気量に大きなトルクで流すようにドライブしたいオーナーが多いのだろう。
そして、このOHV式エンジンを更にハイパワーにしようと考え出されたのが「ヘミ(Hemi)」である。このヘミは、エンジンの燃焼室を大きくしずらいという欠点を解消したもので、クライスラーが改善策として商標登録まで行っているメカニズム。燃焼室を半球体にし、吸排気バルブの挟み角をギリギリまで減らしたものだ。
「SRT」とはストリート&レーシングテクノロジーのイニシャルを取った略称であり、クライスラーの中でもの高性能モデルを手がける特別な部門だ。
この驚異的なパワフルさを持つエンジンは、ダッジの「ヘルキャット」に搭載されるユニットをベースにしたもので、702馬力という最高のパフォーマンスを手に入れた。最高速度は118/mhpに達し、0-100加速は10.5秒というパフォーマンスを発揮してくれる。
多くの部分に改良が加えられた
1500TRXでは、ジープの高性能SUVであるグランドチェロキー トラックホークにも採用されている8速のオートマチックトランスミッションと、2速のトランスファーケースが装備された。
オフロード機能を高めるため、リアには電子ロックリアディファレンシャル、フルフローティングハブ、アクスルホップダンパーが装着されている。
さらに、同クラスでも最長という23.56インチのスプリングが装備され、ビルシュタイン製Black Hawk e2アダプティブダンパーで優れた操縦性と走行安定性を手に入れた。
極端ともいえる調整により乗り心地の低下を防ぐため、1500TRXはベースモデルとなったラムの1500に比べ、ボディ剛性をさらに強化している。なお、最低地上高は11.8インチだ。
また、V8エンジン搭載による車重増加も最低限に抑えられた。ボンネットフード、テールゲート、スキッドプレート、プロペラシャフトにアルミ材を採用することで、ベースモデルより600ポンドの増加に留めている。
エクステリアで特徴的なのは、ボンネットフードに口を開けたエアダクトと、PAMバッジが取り付けられたフロントグリル下部に配置されたフロースルーだろう。これにより、搭載するハイパワーエンジンに効率よくエアーを送り込むことが可能になった。
一方、インテリアでは垂直方向に配置された12インチのタッチスクリーンが目を引く。センターコンソールにはシリアルナンバーを刻印するプレートが装着され、製造番号とエンジン、スーパーチャージャーの仕様が刻まれる。
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1500TRXを一言で例えるなら、オフロードのスーパーカーが適切だ。アメリカの広大な大地を、1500TRXのステアリングを握って高出力と大トルクで悠々と走っている姿には憧れを抱かずにはいられない。
SUVで飽食気味の今、高性能なピックアップトラックは酷く魅力的に映る。1500TRXは、ラプターF-150の地位を本当に脅かしてしまうかもしれない。インポーターを通じて、無理やり輸入してもいい…そう思わせてくれるモデルだ。