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第4章 SUBARU 1000から「レオーネ」の誕生 4WD乗用車への道


 1966年5月に東京・大阪・愛知で、SUBARU 1000が発売され、7月には全国展開となる。SUBARU 1000のデビュー半年後には66年4月の登場で先行する日産サニーを追撃すべく11月、トヨタ・カローラがそれぞれ市場に登場して、国産小型ファミリーセダン・カテゴリーは多士済々なラインアップとなった。

スバル 1000

 当初SUBARU 1000は、4ドアセダンのみのボディ展開で、スタンダード、デラックス、スーパーデラックスというグレード展開で、価格はそれぞれ49.5万円、53.5万円、そして58.0万円だった。

 発売当初から専門家や富士重の技術に詳しいファンから熱狂的に受け容れられたものの、一般には理想を追求したFF方式で広い室内はともかく、シンプルで機能的なインパネなどが、「殺風景で高級感に欠ける」などと評された。また、意欲的設計で採用されたフロントインボードブレーキや水平対向エンジンの整備性の悪さが指摘されたりもした。

 また、後に“スバルサウンド”と呼ばれてファンに親しまれる水平対向エンジン独特の低速域の「ボロボロ」というエンジン排気音も好評とは云えなかった。

 そのためか、SUBARU 360のような爆発的な売上とは行かなかったが、根強いSUBARUファンに支えられ、ジワジワと売れていった。

 翌1967年、販売店の要請もありテコ入れのため、バリエーション拡大を図る。まず当初から企画にあった2ドアセダン3グレードを追加する。3グレード展開で4ドアよりも廉価で若い雰囲気をアピールした。

 同年6月、ライバルたちを見据えて、早くも大きなマイナーチェンジを実施する。ホイールベースを20mm延長し2420mとしてステアリングギア比変更、排気系も見直した結果、最高速が135km/hになった。

 より重要な変更点は“質素すぎる”と評されたインテリアのアップデートだ。室内のパッドを厚くして木目パネルを貼ったダッシュ、メーターデザインの変更、グローブボックス改良などで、“高級感”を追及した。

 東京モーターショーを控えた9月には4ドアバンを追加。ステーションワゴンを思わせるスタイリッシュなバンは、その後のSUBARU Touring Wagonの原型である。

 そして11月、SUBARU 1000のスポーツモデルとして2ドアスポーツが登場する。パワーユニットはハイオクガソリンを要求するEA-53型とされ、ミクニBDS36キャブレターを2連装、カムプロファイルの変更、シリンダーヘッド研磨などで圧縮比10.0から67ps/6600rpm、8.2kg.m/4600rpmを発揮した。フロアシフトの4速MTを組み合わせ、フロントディスクブレーキ、145SR12サイズのラジアルタイヤを装着し、室内では前席にバケットシートが据えられた。このスポーツ、最高速度150km/hを謳っていた。

 1969年3月、富士重はSUBARU 1000のエンジンを拡大、ボアを76mmまで拡げて排気量を1088ccとした「SUBARU ff-1」を発表した。エンジンのアウトプットは標準で出力62ps/6000rpm、トルク8.7kg.m/3200rpm。スポーツで77ps/7000rpm、8.8kg.m/4800rpmとなった。これでスポーツの最高速は160km/hまでアップし、同時にスポーツ以外にもフロントディスクブレーキがオプション設定となった。

 富士重は1970年7月、さらに排気量を拡大した「SUBARU 1300G」を発売する。カローラやサニーがモデルチェンジして熾烈な競争を繰りひろげるなか、エンジンはボアをさらに拡大してボア×ストローク82.0×60.0mmとして1267ccの排気量を得た。そのEA62型エンジンはスポーツ仕様で92ps/7000rpm、10.5kg.m/5000rpmを発揮し、最高速を170km/hまで引き上げていた。

 こうしてSUBARU 1000シリーズは、ff-1として1100ccと1300ccモデルを併売することとなった。価格はもっとも廉価な2ドア1100セダンが46.4万円、いちばん高価な1300G・4ドアスーパーツーリングが69.0万円、ホットモデルとして位置付けられた1300G・2ドアスポーツが63.9万円だった。

 1971年、シリーズは最後のマイナーチェンジを受ける。基本となるメカニズムに大きな変更はない。豪華さの追及と演出によるテコ入れ策と、年々強化される排気ガス規制に対応した改良であった。都合6年間という長いモデルサイクルを生きたSUBARU 1000シリーズは、1000ccでおよそ8万台、以降のff-1で15.6万台あまり生産され、後継となる「レオーネ」にバトンを託す。

 SUBARU 1000は、日産サニーとトヨタ・カローラが日本のモータリーゼーションを牽引するメインストリームで凌ぎを削るなか、カローラやサニーほどの人気と話題を得ることはなかった。しかし、合理的でマニアックなFF方式、欧州車のようなシンプルな内外装、優れた操縦性が高く評価された。が、少数の“マニアのための凝ったクルマ”というイメージが、拭えなかったのも事実。

 だが、水平対向4気筒を縦置きして前輪を駆動するシステムは、現在のSUBARU車に通じる普遍のレイアウトであることは間違いない。エンジニアの理想をとことん追及して完成させるSUBARUのクルマづくりの歴史で、SUBARU 1000は、その理想が見事に結実した存在だったと云っていい。

 1960年代の日本自動車界は前述のようにトヨタ、日産が市場をリードする恰好で急成長する。1960年に40万台/年ほどでしかなかった新車販売は、1969年に375万台、つまり10年で10倍に膨らむ爆発力をみせた。そのフォローの風を受けSUBARU 1000もある程度の売上を記録したが、順風満帆とは云える状況ではなかった。

 そこで富士重は1971年10月、SUBARU 1000の抱えていたいくつかの反省点を踏まえた新型車を発表する。当初、SUBARU ff-1と併売するA22型の新型「レオーネ」の登場だ。

スバル レオーネ

 2ドアクーペのみで登場したレオーネは、SUBARU車のアイデンティティとも云えるボクサー4によるFF方式を受け継ぎ、理想主義を追及し過ぎた先代とは打って変わって、流行のロングノーズ&ショートデッキのエクステリア、豪華なインテリアでデビューした。ボディサイズは全長×全幅×全高3995×1500×1340mm、ホイールベース2455mmと長く低く、少しだけ大きくなった。

 年々厳しさを増す排気ガス規制対応のための補機類のスペース確保と整備性向上のためにフロントサスペンションをウィッシュボーン+トーションバー式から一般的なマクファーソンストラット式に、ブレーキもインボードから一般的なアウトボード式に改められた。リアサスペンションはセミトレーリング、サイドブレーキが前輪側というメカニズムは従来型を踏襲した。

 搭載エンジンは、またもボアアップを図りボア×ストローク85.0×60.0mmの超ショートストロークの1361cc水平対向4気筒だ。ツインキャブのハイチューン版で93ps/6800rpm、11.0kg.m/4800rpmを発揮した。

 車種ラインアップの展開拡大も素早かった。1972年2月には4ドアセダン、4月に2ドアセダンと4ドア・スーパーツーリング、さらに8月には後述で詳しく解説する4WDのエステートバンをデビューさせる。また、1973年6月にはハードトップボディを追加してレオーネのラインアップはほぼ完成した。

■SUBARU 4WDへの道を拓く

 新型レオーネにとって、いや、その後のSUBARUにとって極めて重要な1台がそのラインアップに隠されていた。いまやSUBARUの代名詞といえる4WDである。

 きっかけは1971年3月、富士重の大手特約店のひとつ「宮城スバル」が、妙な試作車を富士重に持ち込んだ。車体はff-1の1100ccバンだが、下回りにドライブシャフトとリアデフを備えた改造4WDとなっていたのだ。

 当時、宮城スバルの大口顧客であった東北電力は、送電網の保守点検用車両に山岳路に強い4WDのJEEPを使っていた。しかし、乗り心地の悪さや劣悪な暖房、高い車両価格と維持費などから、東北電力では国産のライトバンで4WD車が出来ないものかと考えていたという。

 自前で作業用特装車などをつくっていた東北電力配電部は、こうした要件を満たすクルマとして、トランスミッションの後ろにプロペラシャフトとリアデフを付ければ4WD化できそうな、エンジン縦置きのSUBARU 1000に目を付けた。製作依頼を受けた宮城スバルは10カ月で4WD車を試作して、月山付近の深い雪道でテストをして、モノになりそうだと判断。量産を前提に富士重本社に持ち込んだのである。それが試作車「71W」となり、SUBARU ff-1・1300Gバン4WD、国産初の乗用4WD車としての登場だった。詳しい経緯は次項に。──敬称略──

国産4WD乗用車の道へ続く

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