2020年8月17日、アストンマーティンが映画『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開を記念して、ヴァンテージ007エディションの発売を開始した。世界限定100台で製造されるこのスペシャルなモデルは、本体価格16万1000ポンド(日本円でおよそ2240万円)からの販売となる。
ボンドカーにニューフェイスが仲間入り
ボンドカーは男の憧れである。イギリスの秘密諜報機関MI6に所属する諜報員、ジェームズ・ボンド――コードネーム“007(ゼロゼロセブン)”は、任務のためなら殺人すら許されてしまうというマーダーライセンスを与えられたスパイである。
あらゆる国の言語を操り、射撃や格闘術も超一流の腕前。いぶし銀な二枚目で、話術にも長けた彼は女性をも魅了し、ありとあらゆる手段を用いて任務を遂行していく。そんなジェームズ・ボンドの活躍を描いた映画シリーズ『007』の作中で、彼がステアリングを握るのが通称ボンドカーなのだ。
今回発表されたヴァンテージ007エディションは、シリーズ通算25作目となる『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開を記念して製作された特別仕様車である。作品本編よりインスピレーションを受け、アストンマーティンのQ by パーソナライゼーションが製作を担当。
過去作である『007 リビング・デイライツ』にて登場したアストンマーティン V8に着想を得たクロームベゼル付きメッシュグリルをフロントに備え、劇中仕様をなぞったイエローカラーのディフーザーを装着する。
ボンドカーのイメージを加速させる特別装備
さらなる“ボンドカーっぽさ”が欲しければ、オプションにて雪の上を滑るためのスキー・アウトリガーを連想させるスキー/スキーラックセットを装備することも可能だ。このスキー・アウトリガーもまた、『007 リビング・デイライツ』のアストンマーティン V8に影響を受けたものである。
ボディカラーには今回、カンバーランド・グレーが採用された。インテリアではオブディシアンのブラックレザーとダーク・クロームを組み合わせたコーディネイトとなる。
さらに、センターコンソールには、スペシャルなモデルであることを示す『007』のロゴが入れられる。
ボンドカーといえば、多くの仰天するような装備やデバイスの数々である。それを再現するため、ロゴ以外にもセンターコンソールには、ある仕掛けが施された。ロケット・モ―ターやミサイル、レーザーなどを起動させるためのスイッチを模し、レーザー刻印されたガジェット・プレートが装着される。
また、コクピット頭上のサンバイザーには96.60(FM)の刺繍入りだ。これは、ジェームズ・ボンドが『007 リビング・デイライツ』で脱出する際に利用したロシアの警察無線周波数である。ジェームズ・ボンドファンなら、思わずニヤリとしてしまいそうな遊び心が満載だ。
メルセデスAMG製V型8気筒エンジンを搭載
ベースとなったヴァンテージは、2代目モデルだ。2016年から2021年にかけて、1年につき1台ずつデビューして行く予定のニューモデルの2車種目となる。ちなみに、第1弾はDB11だった。
プラットフォームは接着アルミプラットフォームとなり、先だってデビューしたDB11やアストンマーティンのフラッグシップモデルであるDBSスーパーレッジェーラと共通するものである。
そして、ヴァンテージが特徴的なのは2人乗りクーペというパッケージングだろう2704mmというショートなホイールベースを持ち、コンパクトなスポーツカーというイメージを強く印象付けてくれる。
ここであえてスーパーカーと呼ばなかったのは、搭載されるエンジンの素性に関係する。ヴァンテージに搭載されるエンジンは、メルセデスAMGが供給する最高出力510PS/最大トルク685Nmを発生させるV型8気筒のツインターボエンジンだ。
スーパーレッジェーラが搭載する5.2LのV型12気筒ツインターボエンジンと比べれば比較的大人しい。
それでもハイパフォーマンスカーであることには間違いないが、これこそヴァンテージが“ベイビー・アストン”と呼ばれる所以である。
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ボンドカーを再現する多くのモデルを生み出してきたアストンマーティンだが、ヴァンテージ007エディションもまたこれまで同様、非常にユニークな仕掛けが多く施されている。
映画『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』は今年の11月11日より公開される予定だ、劇場に足を運んで、ボンドカーとなったヴァンテージの活躍を楽しんでみてもいいかもしれない。