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国内では希少車となった新型アコードが、北米で受け入れられたワケ

2020年2月にフルモデルチェンジを果たし、10代目となったホンダ アコード。先代と同じく、日本仕様車はハイブリッドのみの1グレードというシンプルな構成で販売されている。世界規模では年間50万台を売り上げるというワールドワイドなモデルとなったホンダ アコードだが、多くのユーザーに受け入れられる理由とはなんなのだろうか。

日本を飛び出したグローバルモデル

初代アコードがデビューしておよそ40年。10代目を数える新型アコードは、ホンダが誇るロングライフモデルであると共に、同社のレジェンドが新型となった2015年まではフラッグシップモデルの座に付いていた。

かつては日本国内でもハイクラスなセダンとして一定の人気を獲得していたが、現在では主戦場を国内から北米に移している。それを如実に反映しているのが、導入時期の差だ。

実は、この新型アコードが日本に導入されるおよそ2年前に、アメリカでの販売を開始している。その次はカナダ、そして中国という順番だ。

9代目アコードも同じルートを通って販売された経緯があるが、国内メーカーの車が日本で最初に乗ることができないというのは嬉しくもあり、悲しくもあるような気がする。

しかし、これは我慢しなければならないところだ。何故なら、新型アコードは日本工場での生産はされておらず、タイ国内で生産されている。さらにいえば、年間50万台が売れるグローバルな市場の中では、日本国内でのアコード販売計画は世界規模で見れば雀の涙ほどにしかすぎない。中国だけでも月間5000台が売れるというのだから、気が付けばアコードは既に輸入車に非常に近い日本車という立ち位置にいることになる。

パワーユニット、グレード共にシンプルな構成

冒頭でも触れたが、新型アコードのラインナップは分かりやすい。ハイブリッドのみの設定で、グレードもEXというアコードで脈々と受け継がれてきた懐かしい単一グレードが用意されている。

廉価グレードが設定されていない、ということはさまざまなオプションを搭載したハイグレードのみということになるが、これはホンダのインサイトと競合する部分を極力減らすための策であろう。搭載するパワートレーンやグレードのチョイスで迷わなくても良い、というのは魅力的だが、皮肉に聞こえてしまったのならそれも仕方ない。

また、10代目になるにあたり、搭載するハイブリッドシステムの名称が変更された。スポーツハイブリッドi-MMDという名称を用いていたが、新型ではe:HEVとなる。

ただし、名称が変わっただけでその基本的な構成は変わらずだ。最高出力145PS/最大トルク175Nmを発生させる2.0Lの直4エンジンに最高出力184PS/最大トルク315Nmを発揮するモーターを組み合わせた2モーターハイブリッド方式だ。

熟成が進んだこのハイブリッドシステムは、特に市街地や高速走行で真価を発揮する。発進してから加速までが極めてスムーズに行われ、エンジンがスタートしてもドライバーにそれを気が付かせないほど静かである。

フラッグシップに並ぶ静粛性

アジアでは、リムジンのような使われ方もされるという新型アコード。日本人が思い描くアコードのイメージからは驚くべきことであるが、納得に値する理由がある。それは、車内の静粛性の高さだ。

パワーユニットの静かさに関しては前述した通りであるが、エグゾーストも含めてキャビンにはノイズが侵入しない。これは、新型アコードがアクティブノイズコントロールを搭載しているため。従来では室内マイクを2本としていたが、新型ではこのマイクを3本に増やした。3本目のマイクはコクピットとパッセンジャーシート間の「耳」の傍に設置した。

ノイズ軽減のためのシステムはこれだけではない。新型アコードが足元に装備しているのは18インチのアルミ鍛造ホイールだが、このホイールにノイズリデューシング機能を装備している。ホイールに消音機能を持った樹脂製のレゾネーターを取り付けることで、道路のつなぎ目を踏み越えた時などに発生する共鳴音を低減する。この消音装置と同レベルの消音をボディ側の防音材で再現しようとすれば、車重が10kg前後重くなるという。

徹底したノイズ対策により、リアシートの乗員とも円滑なコミュニケーションが図れるのは想像に難くない。これなら、リムジン的な使われ方をされるというのも合点がいくのではないだろうか。

※ ※ ※

新型アコードの国内販売価格は、456万円~。インサイトよりは100万円近く高い価格設定であるが、ドイツ御三家のDセグセダンと比較すれば相当リーズナブルだ。つまり、ベンツやBMWでは価格が問題になり、インサイトでは高級感が足りないと感じる層にぴったりハマるモデルだということだ。いつの間にか海を渡って遠い存在となってしまったアコードだが、今一度目を向けてみるのもアリかもしれない。

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