クプラ アテカが改良新型となった。元々、アテカのスポーツモデルとしての位置づけでしかなかったクプラブランドが、コンパクトSUV・アテカをベースにクプラ アテカとして独立ブランドの第1弾としてデビューさせたのが2018年のこと。日本ではほとんど知名度のないクプラ アテカの実力はいかに?
クプラブランドとは?
クプラ アテカについて記す前に、クプラとは一体どういったブランドなのか説明しておく必要があるだろう。
米国では知名度があるレクサスでも、西欧ではほとんど名前を知られていない。インフィニティは、名前が浸透する前に西欧からは撤退している。同様に、クプラというブランドについて良く知る日本人も一部を除いてほぼいないだろう。
クプラとは、元々、フォルクスワーゲングループに属するスペインの自動車メーカー・セアトのブランド・イン・ブランドである。トヨタにおけるGRや、ホンダのタイプR、レクサスではFといえば伝わりやすいだろうか。つまり、セアトのスポーツモデルにクプラの名称が用いられてきたわけだ。
しかし、2018年に方針を転換。同じ年の1月に、クプラを単体のブランドとして昇格させることを発表した。そして、同年3月に開催されたジュネ―ブモータショーにて、コンパクトSUV・セアトをベースにしたクプラ アテカと電動モデルのコンセプトカー・eレーサーをプレミアしたのである。
現在のラインナップとしてはクプラ アテカを始め、コンパクトカーであるクプラ レオンやワゴンスタイルのレオンスポーツツアラーなどを展開している。
最も大きなマーケットとしているのはドイツ。次いでスペインだ。そのため、主戦場となっているドイツのフランクフルト・アム・マイン空港には、ターミナルにクプラの展示スペースが設置されている。
派手さはないが、しっかりしたつくり
クプラ アテカは、一言でいえばスタイリッシュなクーペスタイルのSUV、ということになる。アテカをベースに、“セアト色”を一切排除した専用の内外装が与えられたモデルだ。
派手さは抑えられているものの、エッジをくっきりと魅せるキャラクターラインでボディ全体をシャープに見せる手法は、同ブランドのレオンにも通じるものがある。
フロントグリルにはクプラモデルであることを示すCIマークが配され、フロントバンパー下部には「CUPRA」とロゴが入れられている。ヘッドランプは少しアウディチックな形状のフルLEDランプを採用。リアでは、複雑なラインのディフューザーと4本出しマフラーで、高い走行性能を主張する。
一方、インテリアはオーソドックスで機能的な仕上がりだ。計器パネルには最新のフルカラーLCDメーターやインフォテインメントシステムを採用。ソフトレザーやステッチによる遊び心は少ないが、シックなダーク系カラーでシンプルにまとめられた車内には落ち着きが広がる。
シート表皮にはアルカンターラを用いており、アルミ素材を用いたペダルやカーボンのパネルによりストイックなレーシングマシンを連想させるだろう。
クプラらしい高い走行性能
搭載されるパワートレーンは、最高出力300PS/最大トルク400Nmを発揮する2.0L 直列4気筒ターボTSIエンジンである。
このエンジンは、かのニュルブルクリンクにてFFモデルとしてレコードホルダーにも輝いたこともあるレオン クプラのエンジンをベースに改良を加えたユニット。これに、AWDの7速DSGトランスミッションを組み合わせることで、クプラ アテカにSUVとは思えない走りの良さを与えている。
足回りには、専用設計のクプラ スポーツ サスペンションを採用し、トラクションコントロールユニットである4Driveが搭載される。4Driveの採用により、クプラ アテカは走行シーンを選ばずにそのスペックをいかんなく発揮することが可能だ。
また、走行モードでクプラモードをチョイスすれば、サスペンションがスポーティな設定となり、エギゾーストノートが低くうなりをあげるアグレッシブな走りを体感できる。
改良新型では内外装の質感が向上
2018年にクプラブランドの第1弾としてデビューしたばかりのクプラ アテカだが、すでに2020年モデルへとアップデートされている。
パワートレーンは従来のモデルより引き継ぎいたユニットを搭載するが、ヘッドランプ内部のLED形状や、フロントフェイスのエアダムが拡大し、バンパー下部に入れられていた「CUPRA」ロゴは廃止されている。
インテリアではカスタマイズ機能を備えた10.25インチのデジタルコクピットを採用し、ワイヤレスフルリンクが可能な高解像度9.25インチのインドテインメントタッチスクリーンを備える。
また、ステアリングホイールも新設計となり、ドライバーがステアリングから手を離さずに得られる情報が増加、カッパーの加飾も増えている。
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クプラ アテカは、正直なところ日本で正規販売されていないのが惜しいと思えるクオリティだ。並行輸入によって持ち込む方法もあるが、それだけコストがかかる。
ベースとなったセアトのアテカは、コンパクトSUVを探すユーザーにとってはベストな選択肢ともいえるモデルだった。なら、それをスポーティにしたクプラ アテカが注目されないはずはないだろう。クプラ アテカもまた、日本人が知らない「イイクルマ」なのである。