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“GT”を名乗れなかったスカイライン、4気筒DOHC16バルブターボの硬派な「RS」

国産乗用車にあって稀有なブランド構築に成功したプリンス・スカイライン、そして日産スカイライン。1981年8月、そのスカイラインが6代目に生まれ変わった。プリンス時代の初代から設計に携わってきた櫻井慎一郎の最終担当モデルが、このR30型である。

6代目 スカイライン

 6代目スカイラインはTVコマーシャルをはじめとした宣伝キャラクターに、映画「栄光のル・マン」やレーシングドライバーとしても有名だった米国人俳優ポール・ニューマンを起用。フロントエンジン+リアドライブのRWDという基本レイアウトは継承しながら、 “走りのスカイライン”という伝統を受け継いだ「ニューマン・スカイライン」は、日産の自信作であったようだ。

 同時に、型式名がC210系からR30系に改称され、C10型以来スカイラインのアイデンティティとも云われたリアフェンダーのサーフィンラインが消えた。また初代以来、GT系6気筒車とそれ以外の4気筒車で異なっていたホイールベースが6気筒のロングノーズ&ロングホイールベースボディ&シャシーに統一された。ボディバリエーションは多彩で、4ドアセダン、2ドアハードトップの基本構成に加えてステーションワゴン版たるエステートに5ドアハッチバック車を揃えた。

 豊富なボディ&グレードのなかから2ドアHT 2000ターボGT-E-Sをチョイスして車両概要を説明する。ボディ寸法は全長4595mm×全幅1665mm×全高1360mm、ホイールベース2615mm。搭載するパワーユニットは先代からキャリーオーバーした電子制御燃料噴射装置を得たL20型2リッター直列6気筒SOHCターボで、最高出力145ps/5600rpm、最大トルク21.0kg.m/3200rpmを発揮した。変速機は5速MTと4速ATである。

 足回りは2代目の通称“ハコスカGT”以降の伝統である、前マクファーソンストラット、後セミトレーリングアームの4輪独立式だ。これに走りを意識させる減衰力を任意に切り替えられるアジャスタブル機構が搭載されたダンパーを装着していた。ブレーキは前ベンチレーテッドディスク、後ソリッドディスクである。装着タイヤは195/70HR14サイズだ。

■「ポール・ニューマン」バージョン

 そのR30系スカイラインGTに冒頭で紹介した広告塔の映画俳優ポール・ニューマンの名を冠した特別仕様車が登場する。1984年10月、ベースは2リッターターボのL20ET型6気筒エンジンを搭載する2000HTターボGT-E-S。豪華仕様のGT-E-X系に比べて走りのイメージを強く打ち出したグレードだ。スポーティ色を打ち出し、上下2分割のフロントグリルやヘッドライトクリーナー、タービンフィンタイプの専用デザイン15インチアルミホイールに195/60R15タイヤ、専用のスポーツバケット風シートなど専用装備が満載だった。発売当時の価格は238.0万円だった。

■2000 DOHC RS

 6代目R30型がデビューした年の秋、10月に“レーシングスポーツ”を意味する「RS」グレードが追加となる。70年代にクルマ業界に押し寄せた難題、オイルショックに伴う省燃費指向、そしてエミッションコントロールへの強い規制要求のため、日産スカイラインの伝統と神話を築き上げてきた「GT-R」の心臓たるスポーツユニットであったS20型直列6気筒DOHC24バルブが、1973年に廃版となっていた。

 その空白を埋めるために新開発された4バルブDOHCエンジン「FJ20E型」搭載車だ。直列4気筒ながら気筒あたり4つのバルブを持ち、ペンとルーフ型燃焼室やクロスフロー吸排気ポート、市販車世界初といわれたシーケンシャルインジェクション、高回転域における耐久性確保のための2段階駆動タイミングチェーン、パワーロスを抑えるクランクシャフト直結オイルポンプ、フルジャケット型シリンダーなどの凝ったメカニズムを採用していたスポーツエンジンだ。

 こうしてボア×ストローク89.0×80.0mm、1990ccのショートストロークFJ20E型4気筒が発揮した出力&トルクは、150ps/6000rpmの最高出力と19.5kg.m/4800rpmの最大トルクだった。

 FJ20E型エンジン搭載にあたって当然シャシーは強化され、L20ET型ターボ搭載のGT-E-Sと同じ、2段階に減衰力を切り替えられるアジャスタブル機構が搭載されたダンパーを装着し、GT系には設定の無いLSDが標準装備され、ステアリングのパワーアシスト量にも変更が加えられた。

 さらに5速MTの2速ギアをややハイギアードとし3速ギアとのクロースレシオ化が図られ、中速コーナーからの脱出などでトルクの繋がりを重視した専用のトランスミッションとされた。なお、当初14インチ専用アルミホイールに装着されたタイヤは、195/70R14サイズのミシュランXVSであった。

 新開発DOHCエンジンを得て、そのパワーを生かす数々のチューンが加えられたRSだが、内外装の変更点は多くはない。エクステリアでは僅かにラジエターグリルの意匠が異なり、特徴的なサイドプロテクションモールで塗り分けた“ガンメタ×ブラック”、“レッド×ガンメタ”とした2タイプのツートーンの専用ボディカラーが用意されたことだった。

 インテリアも基本的にGT-E-S系と変わりはなく、変更点を上げるなら9000rpmまでのフルスケール回転計が採用された程度だ。

■R30 RS TURBO

 R30型スカイラインRSは、1983年春2月に後述するターボ仕様の「ターボRS」、マイナーチェンジでフロントマスクを変更、“鉄仮面”と呼ばれたモデルとなり、1984年2月にはインタークーラーを装着した通称「ターボC」が登場する。しかし、スカイラインRSは、4気筒だったがために“GT”を名乗れなかった不遇な人気モデルとなる。

 日産製DOHCエンジン、FJ20E型は既に述べたように進化を続ける。ターボを組み合わせたFJ20ET型の登場だ。このユニットを積んだスカイラインは歴代最高の190ps出力を得て、さらにインタークーラー装着のターボCと呼ばれる「RS-X」に至って最高出力205ps/6400rpm、最大トルク25.0kg.m/4400rpmを達成、当時「史上最強スカイライン」の称号を獲得する。

 歴代スカイラインで、ひと際輝くモデルはS20型6気筒DOHC24バルブ搭載の“ハコスカGT-R”であることに異論は無い。が、専用設計された一連の4気筒DOHC16バルブ・FJ20型を積んだR30型「RS」系は、4気筒DOHCを唯一、ただ一世代だけ搭載した稀有な存在である。

 1986年3月、スカイラインは櫻井慎一郎の手を離れた次世代R31型にバトンを渡すが、トヨタ・マークⅡ・3兄弟の“2リッター直6ツインカム24”搭載のハイソカー軍団に挑む軟派な路線に転換して撃沈、スカイライン史上最大の失敗作と云われる。ファンの期待に応えるスカイラインの復活は、1989年のR32型GT-Rのデビューまで待たされることになる。

1989年 スカイライン R32型GT-R

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