X4の初代モデルがデビューしたのは2014年、現行型となる2代目が発表されたのは2018年のことだった。初代モデルが登場して、ブランドの歴史の中でも類をみない約4年という短期スパンでフルモデルチェンジは、大きな話題と注目を集めることになる。
SUVでもクーペでもないSACという選択
2000年、BMWはSUVの新ジャンルとしてSAV(スポーツアクティビティビークル)のX5を発売した。その後も、2004年にX3、2009年にX1と、シリーズの展開を行っている。
それを背景に2008年には、SAVにクーペスタイルを採用したスポーツアクティビティクーペ(SAC)のX6が発表された。
そして今回紹介するX4は、このSACの第2弾であり、X6の弟分にあたるモデルだ。
当初こそX4 xDrive30i・X4 xDrive30i Mスポーツ・X4 M40iという3グレードのみの展開だったが、2019年にはX4 MとX4 M コンペティションを導入。従来のX5 MおよびX6 Mに続く「M」を冠したスポーティなコンプリートカーだ。
世界的に見ても、各メーカーラインナップの充実を図っているSUVカテゴリの中も、SACという名称を用いてアピールするBMWのアグレッシヴな布陣が整ったのである。
与えられた確かな「M」らしさ
さて、今回スポットを当てるのはトップグレードのX4 M コンペティション及びX4 Mだ。
エクステリアデザインは、迫力のあるフロントマスクとは対照的に、サイドのフォルムは美しく流れる。このあたりのセンスも、BMWがSACと位置づける所以だろう。
また、リアウインドウを含めルーフ自体に角度をつけたクーペスタイルは、リアシートの居住性を低下させると言われるが、それが問題視されるのは一般的なSUVに限ってのことだ。SACであるX4には何の問題もなく、むしろスタイリングを際立たせている。
X4 M コンペティション及びX4 Mには、「M」専用の追加外装が与えられている。リアスポイラーやフロントフェンダーに追加されたサイドギルは、ハイパフォーマンスモデルであることをを主張しているし、ダブルブリッジ形状を採用したサイドミラーは、エアロダイナミクスにも良い影響を与える。
さらに、BMWのキャラクターアイコンであるキドニーグリルは、ブラックアウトされたダブルバーで、ここにもMバッジが追加されている。コンペティションでは”competition”のロゴバッジが追加されており、Mの血統を受け継ぐことを強調している。
また、インテリアもスポーティの一言に尽きる仕上げだ。ダッシュボードを始めセンターコンソールやドアのトリムには、織り目が美しいカーボンや、無機的な質感が高級感を際立たせるアルミ材を採用。スパルタンさを演出する車内では、レッドカラーのスターターボタンがアクセントとなる。
さらに、シートもM専用で、Mマルチファンクションシートはホールド性も抜群だ。もちろん、ヘッドレストには「M」の文字が踊る。
爽快な加速を味わうために、スタイルは関係ない
搭載するパワートレインは、3.0L 直列6気筒ツインターボのいわゆる「ストレートシックス」である。X4 Mは最高出力480PS、X4 M コンペティションでは510PSを発揮する。両者とも、最大トルクは600Nmだ。ただでさえハイパワーなモデルだが、X4 M コンペティションに至っては、0-100km/h加速は驚異の4.1秒を記録しており、もはやスーパースポーツカーと呼んでも過言ではない。
なお、搭載されている完全新開発の8速ステップATが組み合わせられるエンジンは、BMWの次世代ユニットとして、今後のラインナップにも採用が見込まれている期待のエンジンでもある。これに、電子制御式可変減衰力ダンパーを標準で装備しているのだから、走りの質感が悪いワケがない。
また、ボディ剛性で定評があるBMWファミリーの一員らしく、高剛性ボディを与えられたX4だが、Mともなればクオリティはより高い。
ハイパフォーマンスエンジンを搭載しているのだから、より高い剛性が求められるため、X4 MとM コンペティションはフロントストラットやバルクヘッド、リアアクスルの周辺に専用ブレースを用いた特別な補強が追加されている。
ほんの少しアクセルを踏み込もうものなら、街乗りで乗りつぶしてしまうのは惜しいほどのハイレベルな走りを見せてくれるだろう。
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スポーティな走りを楽しみたいのなら、地面に張り付くようにして走る必要はない――X4 MとM コンペティションを見ていると、BMWがそう言っているように思えてならない。新しいスポーツの形、それこそがX4 Mなのかもしれない。