2020年3月、ブガッティがシロン ピュアスポーツを発表した。シロンよりスポーティな仕上げを施すシロン ピュアスポーツは、フラッグシップであるシロンが、まだ完璧な姿ではなかったことを示した。シロン ピュアスポーツは、比類なきスーパーハンドリングマシンとして登場するのだ。
より純度を増したスポーツカー
「ブガッティ」、その響きはいつだってクルマ好きの憧れだ。ポルシェ、フェラーリ、マクラーレン、ランボルギーニ…高性能なスポーツカーを作るメーカーは世界にいくつもあるが、ブガッティの名前は、不思議とそれらとはまた違って聞こえる。
自分に国家予算程の潤沢な資産があれば、今すぐにでもブガッティを購入したい!と日々思いを巡らせている人も少なくないのではないだろうか。
さて、今回取り上げるシロン ピュアスポーツも、これまでブガッティが生み出してきたモデルと同じく、多くの人の憧れを喚起するハイスペックモデルだ。
シロン ピュアスポーツは、2020年の後半での発売を目標に開発が続けられている。2005年に発表され、2015年まで製造・販売が続けられていたヴェイロンに次ぐフラッグシップモデル・シロンをより純粋(ピュアな)スポーツカーへ鍛え上げたモデルだ。
軽量化こそ究極のチューニング
究極のドライビングマシンを謳うシロン ピュアスポーツは、ハンドリングに重きを置いたモデルだ。シンプルにスピードを求めた、シロン・スーパースポーツ+300とは真逆の素性を持つ。とはいえ、シロン ピュアスポーツもブガッティの名前に恥じないモンスターマシンである。
搭載されるのは、シロンから受け継いだ最高出力1500PS、最大トルク163.2kg-mを発揮する8.0LのW型16気筒に4ターボを加えたエンジンだ。ベースよりもレブリミットを200rpm引き上げ6900rpmに設定されている。これにより、60km/h-120km/h加速はベースのシロンより2秒も短縮した。
トランスミッションのギアレシオを短縮し、足回りにも手が加えられた。サスペンションは、フロントで65%、リアで33%もスプリングのレートを強くしている。俗にいうバネレートを高くすれば、乗り心地には悪影響を与える場合が多い。
しかし、シロン ピュアスポーツではアダプティブダンパーをリデザイン、キャンバー角を変えることで快適性も確保したとしている。
さらに、驚くべきは大幅な軽量化に成功していることである。装着されるマグネシウム製ホイールやカーボン素材の採用により、全体でおよそ50kgの削減が行われている。特に、マグネシウムホイールの採用が軽量化に大きく貢献した。一般的なアルミホイールに比べ、同じサイズなら2/3ほどしかないホイールを装着することで、バネ下重量を軽減。運動性能の向上を図っている。
すべての要素はその走りのために
ブガッティのオーナーからは、通常モデルでは動力性能とコーナリング性能が物足りないと感じるという声も多かったという。そのオーナー達のアツい思いを反映した結果、シロン ピュアスポーツのエクステリアも大胆なリワークが行われている。
まず、フロントには大きなスプリッターとエアインテークを備え、リアに乗るリアウイングは1.9mという大きさだ。パッと見、巨大な鳥が翼を広げているようにも見える。このリアウイングは見た目の派手さだけではない。走行中に生み出す強烈なダウンフォースによって、シロン ピュアスポーツを路面に釘付けにする。
また、シロン ピュアスポーツは、ボディに用いられているカーボンを主張するため、1/3はカーボン地のままだ。カーボン・ボディを見せることで、「ピュアスポーツ」であることをアピールすることもできるが、少し控え目なオーナーのために分割塗装部分をカスタマイズすることも可能だという。
また、排気系に関しても、3Dプリンターにより成型されたチタン製パイプを採用することで、見えない部分でも軽量化を徹底する。
さらにインテリアでは、トリムをアルマイト・アルミニウムやチタンで彩る。無垢なマテリアルが、スパルタンな雰囲気を作り上げた。
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シロン ピュアスポーツは世界限定60台。販売価格は300万ユーロ、日本円でおよそ約3億6,000万円になるとアナウンスされている。ブガッティのモデルは、予約の段階でそのすべてが売れてしまうことでも有名だ。
きっと、今回も例に漏れずそうなるだろう。日本で、シロン ピュアスポーツを見る機会など、この先一生訪れないかもしれない。しかし、世界のどこかでこんなマシンが、唸りを上げて走っている姿を想像するだけで、心が踊ってしまう。