2020年2月、フルモデルチェンジされたメルセデスベンツのCLAに、新しく180が加わった。新型CLA180は、シリーズの中でもエントリーグレードとされる。初代CLAのデビューから約5年。新しいCLA180がどのように変わったのか解説する。
ユーザーのベストチョイスを増やすため、生まれ変わったCLA180
メルセデスベンツのCLA180は、2013年11月に開催されたデトロイトモーターショーで世界初公開されたFFのセダンだ。セダンとはいえ、そのスタイリングは4ドアクーペというこれまでにない概念で登場したCLSにも通じるものがある。それもそのはずだろう。なぜなら、正式発表の1年前に開催された北京モーターショーに出展されていた、コンセプトスタイルクーペとほぼ同じディティールが与えられているからだ。
2代目となるC118型へモデルチェンジされたのは2019年のこと。メルセデスベンツが謳う、センシュアル・ピュアリティ(官能的純粋)というデザインフィロソフィーが採用され、より次世代的なモデルへと生まれ変わった。
だが、新型CLAのデビュー当初は、180はカタログにラインナップしていなかった。追加されたのは2020年の2月になってからである。これによりCLAは合計5グレード展開となった。ユーザーに、選ぶ楽しさが与えられたのである。
軽快なフットワークを与える新型エンジン
CLA180に搭載されるパワートレーンは、新世代の1.3L 直列4気筒ターボエンジンだ。最高出力136PS、最大トルクは20.4kg・mとなっている。従来型エンジンに比べ、シリンダーヘッドの形状を三角柱にして寝かせるデルタシリンダヘッドを採用したことで、軽量化だけではなくスペースに対する効率も向上。初代CLAが搭載していたエンジンに比べ、14PS出力は上がっている。
このエンジンに、7速の電子制御式デュアルクラッチトランスミッションが組み合わせられ、街乗りから高速走行までシーンを問わず軽快は走りを実現した。燃費性能も、WLTCモードで15.5km/Lと、普段から頻繁に乗り回してもガソリン代が苦にならない優秀な数字だ。
顧客の若返りを図ったデザインは、若々しさと凛々しさに溢れている
前述したように、CLA180のエクステリアデザインは4枚ドアのモデルとは思えないほど流麗だ。それを裏付けるかのようにメルセデスベンツのホームページを覗いてみても「セダン」の文字は1つもない。それどころか、「CLA クーペ」と大々的に記載されている。 CLA180をセダンと呼ぶのは失礼なことなのかもしれない。
特徴的なのは、ボディの各所からエッジやキャラクターラインが最低限まで減らされている点だ。初代モデルと並べてみると分かりやすいが、よりシンプルな力強さを感じることができる。
フロントフェイスにはメルセデスベンツのスリーポインテッドスターが堂々と鎮座し、L字型LEDが採用されたヘッドライトが装備されている。”いかにも”感があるSクラスと見比べてみると、CLAのフロントフェイスからは若々しさと凛々しさを感じることができるだろう。
メルセデスならではの質感高いインテリアと、利便性を増したインフォテインメントシステム
メルセデスのインテリアデザインは、高級感に溢れていることはいわずもがなであるが、2代目CLA180の室内はよりスマートでシンプルなものになっている。次世代感を強調する質感高い運転席周りのデザインは、一足早く次世代へ足を踏み入れたAクラス譲りのものだ。
初代モデルに採用されていたメータークラスターは廃止、代わりにワイドスクリーンディスプレイが搭載された。
目玉といえば、CLAにも最新のインフォテインメントシステムであるMBUX(メルセデスベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)が採用されたことだろう。AI技術を取り入れたこのシステムの使い心地が非常に心地よい。スマホとのやり取りでAIとの会話に慣れている現代人ならすぐに使いこなせるだろう。ナビゲーションでの目的地設定はもちろん、エアコンの操作、天気予報、有料道路の料金計算、ETCカードの挿入確認などなど……運転中必要となる大抵のことは口先一つでできてしまう。CLA180を新しく購入した人がまずやるのは、エンジンを吹かすことではなく、MBUXとの会話を楽しむことだろう。
室内サイズは、新型プラットフォームであるMFA2が採用された恩恵を受けて拡大。初代モデルと比較するならば、前席幅+35mm、後席幅+44mm、前席ヘッドルーム+17mmとなっている。
また、容量不足が基本的に不満の声として上がるクーペモデルながら、ラゲッジスペースは460Lを確保。日常的な買い物などであれば、十分すぎる容量だろう。
ただのセダンでは物足りないアナタへ
2代目CLA180は、CLAファミリーの中ではエントリーグレードに当たる。価格は最廉価の税込み446万円だ。しかし、一番安いベースグレードと侮ってはいけない。プラットフォームと同様、作りこまれた足回りは高いパフォーマンスを発揮するし、先進の安全装備はSクラスとほぼ同等だ。そういった意味では、メルセデスの世界観に初めて触れるにはうってつけのモデルだといえるのかもしれない。