タラッコといえば、セアトの大ヒットモデルだ。2018年のデビュー以来、様々な賞を獲得してきたがついにプラグインハイブリッドが追加される。タラッコe-HYBRIDと名付けられた、レオンe-HYBRIDに続く2番目のPHEV。競合ひしめくヨーロッパで、覇権を握ることができるのだろうか。
まさかの形で登場したタラッコe-HYBRID
セアトのタラッコが世界に向けて初めて公開されたのは、2018年に開催されたジュネーブモーターショーであった。この車名は、スペインのカタルーニャ州にあるタラゴナという港町に由来する。
このネーミングが選ばれた経緯が少し特殊で、セアトがジュネーブ・チャレンジと名付けて行ったファン投票によって付けられた名前である。ちなみに、このジュネーブ・チャレンジへの参加者は14万6124人。世界134ヵ国からの投票があったという。
このチャレンジに参加していた日本人がいたかどうかは定かではないが、とにかくセアトが作った新型SUVに対する注目度は世界規模だったと推察される。
その後、プラグインハイブリッドである「e-HYBRID」が追加されたのは2020年のこと。これには、少々国際的などよめきが広がったことは言うまでもない。なぜなら、セアトはフォルクスワーゲン参加。そのフォルクスワーゲンが2016年に発表していたティグアンGTEのコンセプトモデルを市販化しないまま、セアトのタラッコをPHEVにしたためだ。
つまり、市場の予想を裏切る形で市販化に至ったモデルが、セアトのタラッコe-HYBRIDであるといえるだろう。
最高出力245PSを発揮
タラッコe-HYBRIDに搭載されているパワートレーンは、親会社であるフォルクスワーゲンが展開するゴルフのGTEとパサートGTEに搭載されているシステムとほぼ同様のものだ。最高出力150PSを発揮する1.4LのTSIエンジンに、13kWhのリチウムイオンバッテリーを採用した85kWhのエレクトロニックモーターを組み合わせる。
システム総合では、最高出力245PS/最大トルク400Nmとなり、トランスミッションは6速のDSGデュアルクラッチトランスミッションを採用。0-100km加速は7.5秒、最高速度は205km/hに達する。バッテリーのみでの最大航続可能距離は49kmだ。
このシステムを、ドライバーはさまざまな運転モードで制御することが可能とする。デフォルトのハイブリッドモードであるe-Modeを始め、自動ハイブリッド、手動ハイブリッドがそれらだ。テストによれば、タラッコe-HYBRIDはわずか2Lほどの燃料を使って100kmほどの走行距離を実現したという。
さらに、エコ・ノーマル・スポーツといったドライバープロファイルも用意されている。これらを切り替えることで、車両の乗り心地やハンドリング特性を好みに設定することができるのだ。
クラストップのユーティリティに注目
基本的なデザイン自体は、ベースとなったタラッコの内燃機関搭載モデルとほぼ変わらない。明快な違いといえば、リアに装着される「e-HYBRID」くらいなものだろう。
しかし、スポーティなFRグレードになると、途端にアグレッシブなクロスオーバーに早変わりする。幅の広いホイールアーチに加え、リアスポイラーを装着。専用デザインの19インチアロイホイールが俊敏さをイメージさせてくれる。
一方、インテリアでは2.8mのロングホイールベースが生み出す、広々としたキャビンが特徴だ。積載能力も高く、700Lのラゲッジスペースを確保。このスペースは、全てのシートを折りたたむことで1,775Lに拡大する。
インパネ周辺では、ステアリングの奥で視認性の高い10.25インチのデジタルインストルメントパネルが光る。インフォテインメントパネルとして、9.2インチのスクリーンをフローティング(浮いたように見える)で配置。使いやすく、非常に洗練された印象を与えてくれる。
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2020年、ヨーロッパで販売されたプラグインハイブリッド車は619,129台にも及んだ。今後、更に市場は拡大していくだろう。その中にあって、セアトのタラッコe-HYBRIDは非常に魅力的な選択肢の1つである。クラストップのユーティリティに、プライグインハイブリッドだからこそできる低燃費が、プジョーの5008・ヒュンダイのサンタフェ・シュコダのコディアックといったライバルたちの中にあっても、一際存在価値を高めている。