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【アウディ e-tron GT】共に高性能モデルの RSもデビュー 競合を脅かす存在となるか

ドイツ アウディが、2021年2月より受注を開始すると発表したAudi RS e-tron GT。2018年にロサンゼルスモーターショーで公開されたプロトタイプの市販化モデルとなる。アウディEVシリーズ e-tronのフラッグシップとなるハイパフォーマンスモデル、RS e-tron GTの正体とは?

ライバルひしめくカテゴリへ飛び込む

ハイパフォーマンスモデルは「RS」の名前を冠する。アウディの伝統に則って、RS e-tron GTは完全電動のe-tron GTの性能に磨きを掛けたハイスペックなモデルだ。

ポルシェとのアライアンスによって開発されたこのEV。アウディにとっては、電動SUVのe-tron、それをクーペスタイルにしたe-tronスポーツバックに続く3車種目のEVとなる。

プラットフォームには、ポルシェのスポーツサルーン・タイカンと同じくJ1プラットフォームを採用。同グループのタイカンは元より、総額150億円にも登るビットコインへの投機で世間を湧かせたCEOイーロン・マスク氏率いる、テスラのモデルSと競合となるだろうか。

映画『アイアンマン』への出演や、スクウェア・エニックスが手がけるRPG『ファイナルファンタジー15』とのコラボでも知られている、スポーツクーペR8や、他のRSモデルと同様のラインで製造されるRS e-tron GT。しかし、共通部品はおよそ40%程度とした。これにより、グループ内での競合を避ける狙いだ。

「RS」に相応しい動力性能

RS e-tron GTに搭載されるパワートレーンは、当然内燃エンジン……ではなく、フロント/リアアクスルに1基ずつ設置された電動モーターである。

ベースとなったe-tron GTがシステム総合出力476ps/最大トルク630Nm、ブーストモード使用時最高出力530psとなっているのに対し、RS e-tron GTは最高出力598ps/最大トルク830Nm、ブーストモード使用時640psに達する。さらに、0-100km加速は3.3秒、最高時速は250km/hでリミッターが掛かる仕様だ。俊敏さは、EVならではといえる。

総容量93kWhを誇る大型のバッテリーを搭載し、WLTPモード計測での航続可能距離は472km。800Vのリチウムバッテリーは、急速/通常充電にも対応しているという。

では、この数字兄弟車と呼べるタイカンと比較してどうなのだろうか。バッテリー容量やシステム自体はほぼ同じものを搭載しているが、タイカンターボSは最高出力625ps、ブーストモード使用時には761psにまで跳ね上がる。

つまり、カタログスペックではタイカンの方が走行性能は上ということだ。当然、0-100km加速もタイカンに軍配が上がり、RS e-tron GTの3.3秒と比べ、タイカンは0-100kmを2.8秒で駆け抜けてしまう。

では、RS e-tron GTのタイカンへの優位性はどこなのだろうか。それは航続可能距離の長さにある。

これは、未来のグランツーリスモを目指したRS e-tron GTと、ピュアスポーツEVを目指した両者のコンセプトの差ともいえるが、タイカンのターボSが目一杯で416km航続可能であることに対し、RS e-tron GTは472kmの航続ができる。俊足だがスタミナのないタイカンと、タイカンより足は遅いがスタミナのあるRS e-tron GTという構図。

一長一短ある2台だが、RS e-tron GTは日本円でおよそ1,750万円、タイカンターボSが2,454万円と大きな差がある。このあたりは、ユーザーの価値観が試される部分だろう。

これからのアウディを担う存在として

RS e-tron GTは、アウディがドイツ本国で生み出した初めての電動ハイパフォーマンスカーとして多くの最新技術が搭載されている。

標準装備となる3チャンバー式アダプティブサスペンションは、選んだドライブモードによって車高を42mmの間で上下させてくれる。さらに、伝統のクアトロシステムは電動化の恩恵を大きく受け、駆動のためのトルク配分が1/1000秒間で連続的に制御可能になった。伝達速度も機械式と比較しておよそ5倍。パフォーマンスやスタビリティが優れていることは間違いない上、全長4,960mm×全高1,960mm×全幅1,380mmの超ワイド&ローなボディ内部には、4名の乗員がゆとりを持って座ることができる車内空間も実現。

シャープなラインを極力排した肉感的なクーペスタイルと、精密なグランツーリスモとしての性能を凝縮。

まさに、アウディの技術の結晶と呼べる完成度を誇っている。

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2018年のロサンゼルスモーターショーにてコンセプトモデルが発表されて足掛け3年、ようやく市販化に至ったRS e-tron GT。

これまでアウディが手がけてきたモデルたちとは、コンセプトやデザインの方向性に明確な違いが見られる渾身の作だ。

日本への導入時期はまだ明らかにされてはいないが、一度上陸すれば話題を攫ってしまうのは間違いないだろう。