Hundreds Cars

【CG】 普通の「M」では物足りないアナタへ。BMW M5コンペティションを

BMWでいうコンペティションとは、Mモデルを基にしてパフォーマンスを極限まで磨き抜いたモデルだ。2019年初頭、M5にコンペティションを冠したモデルが登場した。欧米諸国とは異なり、狭小な道路しか持たない日本国内ではそのポテンシャルをフルに発揮することはできないだろう。しかし、ハイスペックなサルーンとして見れば抜群にクオリティは高く、その満足度と快適さは段違いだ。今回は、普通のMではないM5コンペティションの刺激的な魅力に迫る。

Mよりも、速く。そして、力強く

そもそも、当たり前のように口にするMとはなんなのだろうか。このMは、モータースポーツ”Motor sports”のMである。遡ること1972年、BMWのモータースポーツ部門として誕生したBMWモータースポーツを前身とする現BMW M GmbHが手がけたモデルにのみ与えられるのが「M」の称号である。Mモデルが公道を走るためのハイパフォーマンスカーなら、コンペティションモデルは、更にその上のサーキット走行まで可能にする純粋なレーシングカーにも迫るチューニングがなされる。

通常のMモデルであっても公道ではオーバースペックに感じるほどであるが、コンペティションともなればなおさらだ。F90という開発コード、エンジンも同型であるが発揮するパワーは段違いに引き上げられている。

M5が最高出力600PSなのに対し、M5コンペティションは625PSを発揮。0-100km/h加速も3.3秒と0.1秒短くなっている。最大トルクこそ変わらないものの、回転域も260rpmほど向上しているため、ひとたびアクセルを踏めば4.4L V型8気筒のツインターボエンジンが鋭く、強烈に吹き上がる。

エクステリアも刺激的

M5コンペティションは、コンペティションらしいエクステリアも刺激的だ。特に、標準装備されるMスポーツエギゾーストシステムが特筆に値する。通常のM5でもオプションにより装備されるこのシステムは、オーバル2本出しのデュアルタイプのマフラーを装着する。テールパイプまでグロスブラック塗装が施されるため、リアビューは精悍そのものだ。

さらに、Mサウンドコントロールスイッチを切り替えることで、走行モードに応じてエグゾーストの音質を調整することも可能。実際にマフラー音を変えるのではなく、車内に設置される専用のスピーカーにより音質を変えているのだが、ドライバーにそうとは気が付かせないほど自然に違和感なくドライブフィールを高めてくれる。

このマフラーと同じく、M5コンペティションにはグロスブラック仕上げされたパーツでボディを飾る。縦のダブルバーを備えたキドニーグリルに始まり、ドアミラー、フロントフェンダーに施されるエアアウトレット、トランクリッドのスポイラー、バンパースカートが艶やかな黒でボディを引き締める。

また、装着する20インチホイールはBBSホイールを髣髴とさせるY字スポークとなり、ストイックなスポーティさ足元から漂わせる。このデザインのホイールは、数値以上の大口径感があるのもポイントだ。さらに、M5としては初採用となるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製のルーフと、アルミニウムを採用したボンネットフードがM5の中でもコンペティションモデルであることを力強くアピールする。

細部に宿る、走りの美学

ボディサイズこそ通常のM5と変わらないM5コンペティションだが、最低地上高、つまり車高のみ厳密にいえば7mmほどローに設定されているという。カタログスペックでは1480mmとなっているものの、この微妙な違いで高速走行時の安定性を向上させると共に、地を這うような見た目を生み出している。

さらに、サスペンションのバネレートを10%ほどアップさせることで、足回りを引き締めた。ふわふわとした絨毯のような乗り心地というよりは、本格的なGTカーとしての色が濃い。ボディ剛性の高さには定評のあるBMWだが、コンペティションではフロント周りの剛性を追求した。その恩恵はハンドリングにも現れており、クイッキーともいえるほどノーズの挙動が軽い。この軽快な挙動を、スポーツディファレンシャルのトルクベクタリングで巧妙に制御する。

* * *

4WDを積極的に取り入れたことで、BMWのM5コンペティションは安定感という面でも高い次元に達した。ドライバーが過度に緊張したままステアリングを握らなくてもいいデザインがなされている。刺激的な走りを楽しめることは間違いない。しかし、625PSの爆発的なパワーを手足の様に動かせる楽しさをも提供してくれるマシンだ。