クルマで行きたい、兵庫の旅館

HC編集者

3年前

南蛮貿易によって栄えた港町・神戸を県庁所在地とし、中国山地に代表される豊かな山々を擁し、日本海と瀬戸内海に隣接する兵庫県。日本屈指の名湯・有馬には、季節を問わず多くの湯治客が訪れることでも知られている。そんな兵庫県観光で欠かせないのが、旅の疲れを癒してくれる宿。今回は、兵庫県にある車で行きたい憧れの旅館を紹介する。

有馬山叢　御所別墅

東京方面から来る場合、阪神高速7号北神戸線を西宮山口南出口で降り、有馬温泉方面へ走ることおよそ10分。大阪方面からなら、近畿自動車道吹田JCTより中国自動車道へ。西宮山口JCTを経由して、阪神高速7北神戸線西宮山口南ICで一般道へ降りよう。

『有馬山叢　御所別墅』は日本書紀にて日本三古湯に数えられた、至上の名湯・有馬温泉の中心部に位置している。江戸時代に発行された温泉番付では、当時最高位の西大関に格付けされたこともある由緒ある有馬温泉。

薬効豊かな湯には、鉄分や塩分、ミネラルといった成分が豊富に含まれており、空気に触れることで独特な陶色になる。御所別墅では、そのお湯を贅沢な源泉のまま掛け流している。

14世紀以降、近年までは有馬唯一だった温泉浴場には、当時を忍ばせるこぢんまりとした大きさの湯殿が。大浴場以外でも、ヴィラタイプの客室で御所泉源と妬泉源から引き込んだ有馬の湯が堪能できる。

客室は、4名定員で滝川を望む眺望の木造メゾネットタイプと、清水池に面した静かな晴れの木造平屋スイートルーム。高い天井が開放的で、体の免疫機能を向上させてくれるというサーマルルームも。緩やかな川のせせらぎが、極上の癒し空間を演出する。

西村屋本館

北近畿豊岡自動車道但馬空港ICより、車でおよそ20分。『西村屋』は、コウノトリの飼育・繁殖地としても有名な兵庫県の豊岡市に位置する温泉旅館だ。

この豊岡市には、開湯1300年という有馬温泉にも匹敵する城崎温泉が湧出しており、かつては志賀直哉や与謝野晶子といった多くの文人墨客が足を運び、現在では年間に1000万人以上の観光客が訪れる温泉地となっている。

そんな城崎温泉で、創業160年を数える西村屋は江戸・安政年間創業以来のおもてなしの心を今に受け継ぐ老舗旅館だ。丹念に手入れされた日本庭園を囲むように建てられた客室は、一枚の絵画を愛でるような和の様式美に溢れている。

一般客室を始め、露天風呂付客室の「飛鳥の間」に「初音の間」など、伝統的な数寄屋造りだけが醸せるしっとりとした佇まいの空間は気品と落ち着きに満ちている。

中でも、昭和35年に数寄屋建築の巨匠・平田雅哉氏によって建てられた別棟の平田館は、西村屋の真髄といっても過言ではない。当時としては斬新だった材料を各所に用い、竣工から40年以上経過した現在でもその輝きは一片のくすみもない。季節によって変わる調度品は館内を美術館のごとく彩り、時間の進みが緩くなる瞬間をきっと体験できるはずだ。