Hundreds Cars

ホンダ・シビックが3rdバージョンで大きく変化を遂げ、久々にスポーツモデルに着手

=========================================

1972年10月、環境対応エンジンCVCCエンジンを以て、世界で最初にマスキー法を突破したホンダは、1980年代に入ると、本格的に新型車開発に着手する。その内容は、環境対応策に忙殺されていた技術開発陣が、それまでの鬱憤を晴らすかのように、スポーティモデルを次々にリリースする動きとなる。

=========================================

 しばらく途絶えていたホンダ“S”の系譜の先駆けは、2代目プレリュードに搭載した特異で斬新な3バルブレイアウトの直列4気筒SOHC12バルブ・エンジンであり、ヒット作のコンパクトカーで、これまた独走的なデザインのコンパクトモデル、シティに追加したターボ&ターボⅡだった。

■3rdシビックのスポーツバリエーション「CR-X」

 それらに続いて1983年6月に送り出されたのが、バラードスポーツCR-Xだった。バラードの冠名が付くCR-Xだったが、その中身は遅れて登場する3代目シビックのボディバリエーションのひとつとしてラインアップに加わるモデルだった。

 ボディサイズは全長3,675mm×全幅1,625mm×全高1,290mm、ホイールベースは2,200mmと全幅に較べて極端に短い全長とホイールベースが独特のディメンションとなり、車重800kg程度のライトウェイト・ファストバック・クーペである。外観は半目が開いたセミリトラクタブルライト、開口部が大きい国産初となるアウタースライド・電動サンルーフなどを装備した凝ったモデルでもあった。インテリアは2+2のシートレイアウトだが、事実上2シータースポーツだった。

 フロントノーズに横置き搭載するエンジンは、プレリュードの気筒あたり3バルブと同じレイアウト、EW型直列4気筒SOHC12バルブ。排気量は1488ccがメインで電子制御燃料噴射ホンダPGM FIをもって110psを発生した。トランスミッションは標準で5速マニュアルだが、3速ATも選択できた。サスペンションは従来のシビック&バラードから大きく変化し、フロントが縦置きトーションバーによるダブルウイッシュボーン式、リアがトーションビームだ。

■多彩なボディラインアップのワンダーシビック誕生

 このCR-Xから遅れること3カ月、1983年9月に本命のシビックが3世代目にモデルチェンジする。それまでのシビックのイメージを一新する“ワンダーシビック”の登場である。大きな特徴は、3ドアHB、4ドアセダン、5ドアワゴンの3種類のボディが独立したパッケージでまとめられたことだった。数字で示すと3ドアHBが全長×全幅×全高3,810×1,630×1,340mm、ホイールベース2,380mm。4ドアセダンが4,145×1,630×1,385mm、シャトルと命名された5ドアが3,990×1,645×1,480mm、セダンとシャトルのホイールベースが2,450mmだったのだ。そして冒頭のCR-Xの3,675×1,625×1,290mm、ホイールベース2,200mm、計4種のボディを揃えた。

 エクステリアデザインで目立った存在は3ドアHBモデルで、リアエンドまで伸びたルーフが垂直に近い角度で切り落とされたリアゲートを持ち、全高は低いが広い室内を実現したスポーティな存在だった。エンジンやサスペンションなどのメカニズムは先にデビューしたCR-Xと同じだった。

 このワンダーシビックは専門家や市場の評価が極めて高く、83-84年日本カー・オブ・ザ・イヤー、グッドデザイン大賞(3ドアHB)を独占した。

■軽量ロングストローク型テンロクDOHC「ZC型エンジン」登場

 翌1984年11月、そのシビックHBとCR-XにホンダS800以来となるDOHCエンジンが搭載される。構造的には当時のホンダF1エンジンと同じスイングアームによる16バルブヘッドを持ったZC型で、ボア×ストローク75.0×90.0mmの1590cc・直列4気筒DOHC16バルブのレイアウトから、最高出力135ps/6500rpm、最大トルク15.5kg.m/5000rpmを発揮。同エンジン搭載車は「Si」グレードとされた。

 このホンダ製1.6リッター直列4気筒DOHCのZC型エンジンは、そのボア×ストローク数値から分かるようにスポーツエンジンとしては異例なロングストローク型だ。一般的にスポーティユニットと呼ばれるエンジンの多くは、高回転&高出力を得る目的でショートストローク型やスクエア型となる。同時期にトヨタAE86系に搭載してデビューした、トヨタ製新型テンロク・ツインカム「4A-GEU」のボア×ストローク81.0×77.0mm、最高出力130ps/6600rpm、最大トルク15.2kg.m/5200rpmの高回転型が代表格だ。いっぽう、ロングストローク型は低回転域におけるトルク特性に優れ、扱いやすい実用的なエンジンとされる。

 だが、ホンダは直列エンジンの全長が長くなるのを嫌ったのか、EW型ベースのロングストロークエンジンを選んだ。そして、DOHCヘッド回りは前記したようにF1エンジン譲りのスイングアームによるバルブのハイリフト駆動など凝ったメカが満載だった。ZC型のメカニズムを列記するとオールアルミ製シリンダーブロック、ペントルーフ型燃焼室+センタープラグ、軽量ピストンや、これもフリクションロスを嫌って軽量化した中空カムシャフトなど、ホンダ独自の技術が投入された。

 何故、ホンダはスポーツユニットであるZC型をロングストロークとしたのだろう。当時、いろいろと詮索されたが、エンジンを横置きするFF者の場合、ショートストロークとするとボア径が大きくなり、エンジンの全長が長くなる。そこに変速機を同一線上に置くと、全幅の狭い小型車には載せられなくなる。そのためのホンダのロングストロークだと思われる。

■しかし、高回転域までスムーズに吹き上がるZC型DOHC

 ZC型を搭載したシビックSiは実にトルクフルで、そのスペックから想像できないほど高回転域までスムーズに吹き上がった。パワーステアリングやパワーウィンドウなどをパッケージオプションとして、それらを装備しないパワーパッケージ・レス車の800kgを僅かに超える車重には十分すぎる動力性能を与えた。

 そのトルクは、雨上がりの濡れた路面でセカンドギアを選んでいても、フルスロットルを与えるとサスストロークが短い故か、フロントタイヤがホイールスピンに至る、ややジャジャ馬とも云える挙動を示す場合もしばしばだった。

 1987年9月のバブル景気絶頂前夜、シビックとCR-Xはモデルチェンジを受ける。ZC型エンジンは継承され、ここでも「Si」グレードを名乗る。続投したZC型は、圧縮比のアップ、カムプロファイルの最適化、ピストンにモリブデンコーティングを実施した新型に換装などブラッシュアップを受け、ネットで130ps/6800rpmの最高出力を絞り出した。

 その後、ホンダのDOHCエンジンは1989年に、さらなる高回転型ロングストロークを目指して、可変バルブタイミング機構「VTEC」を開発、シビック&CR-Xの「SiR」グレードに搭載する。このVTEC機構は、その年に発表となったスーパースポーツ「NSX」のV型6気筒にも採用となる。