石川県を訪れたら味わっておきたいのが、加賀料理である。藩政の時代から連綿と培われてきた独自の食文化が根付く石川県・金沢の食の歴史は、日本人なら一度は触れておいても損はないはずだ。
春夏秋冬、四季折々の食材をふんだんに使い、美しい器と作法により加賀の懐石料理は完成するという。北陸自動車道金沢森本ICより、車でおよそ20分。そんな加賀料理を提供するのが宝暦2年創業の『つば甚』である。
加賀百万石の礎を築いた前田利家お抱えの鍔師であった3代目甚兵衛が、西暦1752年に営んでいた塩梅屋がルーツと言われている。元は友人たちをもてなすための料理を振舞っていたが、趣向に満ちた料理が瞬く間に評判に。それ以降、初代内閣総理大臣の伊藤博文や松尾芭蕉といった多くの偉人や文豪、画家が訪れ、その足跡を残している。
ここでは、鯛を背開きにして卯の花を詰めて蒸しあげた「鯛の唐蒸し」や「治部煮」、高級魚の「のど黒」といった金沢ならではの料理を美しい器と共に堪能できる。
価格は昼の「御昼食コース(15,000円~)」と、決してリーズナブルとはいえないが、この店が歩んできた歴史を考えればそれでも安いと思えるのではないだろうか。